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24 宮内という男7
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翌朝。
関口は宮内と演奏会に出発すると言っていたが、場所が近いので昼近くになるといっていた。
近場での演奏会のときは、日帰りにするようにしているのだ。
余計な出費は控えたいから。
いや、それだけではない。
蒼と離れていたくないから。
蒼が部屋を出る頃、変なやけ酒のせいか?
二日酔いになった関口はベッドの中で眠っていた。
昨日は早く帰って来たようで安心だ。
朝、目が覚めて、彼が隣にいなかったらどうしようと言う不安が胸の底にあった。
その不安と重なって、咳が止まらなくて熟睡感が得られなかったらしい。
今日は、本当に眠くて仕方がないのだ。
関口は、まだ眠っているのだろうか。
「……いいなあ」
そんなことを考えているうちに、ついに蒼は机に伏して眠ってしまった。
いくら眠くても、こんなことは初めてかもしれない。
いつもは吉田の役回りなのに。
とうとう蒼も睡魔には勝てなかった。
居眠り常習犯の吉田は、自分は負けてしまうくせに、人が負けていると厳しい。
いち早く蒼の居眠りを見つけて、星野に合図を送る。
星野も苦笑していた。
少しの居眠りでも厳しいのに。
机に手をついて額までつけて。
こんな豪快に寝ているのがばれたら、水野谷は大目玉だろう。
その笑いは尾形や高田、氏家まで波及する。
ざわざわしている気配に顔を上げた水野谷は蒼を発見した。
さすがに堂々と寝られてしまっては、水野谷の立場が無い。
可哀相だとは思うが、仕方がないといったところか。
彼は隣にいる星野に「起こせ」と合図を送った。
「あちゃ……。課長に見付かっちゃ仕方ね~な」
星野はため息を吐いてから蒼の肩に手を掛けた。
「蒼。おい。蒼って。起きろ」
それでも起きない蒼。
「蒼って!」
星野は声を大きくして肩を揺らす。
「うるさいなあ……。関口」
一瞬、みんなの手が止まった。
「関口?」
「関口ぃ?」
「関口」
「関口……?」
「セキグチ?」
星野ははっとする。
やばい。
ばれてしまうではないか。
珍しく焦った。
「おい!蒼。家じゃないんだぞ!」
星野は声を潜めて蒼に伝える。
しかし、皆は聞き耳を立てている。
そんな星野の言葉を逃すはずがない。
「うち?」
「?」
「家ぃ?」
「いえ?」
「ウチ?」
星野は、一人で汗をかいている。
こんな失態は初めてかもしれない。
「……」
もう、言い訳のしようもなかった。
変な汗が背中を伝った。
しかも、こういうときに限って追い討ちを掛けるように関口が姿を現した。
「こんにちは~?蒼います?携帯忘れてったものですから……?あれ?」
「なぜ?」
「セキグチが」
「蒼の」
「携帯を」
「持ってきた……?」
星野は、またまた大きくため息を吐いた。
「お前らな~!ちっとは緊張感持って生活しろよって!」
「?」
関口は目を瞬かせる。
はっと我に返った職員は一様に笑顔になる。
事情を察知したらしい。
水野谷も、氏家も、高田も、尾形も、吉田も。
みんなそれぞれに視線を合わせて頷く。
「そういうことだったのか!お前ら。お幸せに」
「蒼を泣かせるなよ」
「居眠りさせるな」
「結婚式すっぺ」
関口は焦る。
「星野さん!どういうことです?」
「こいつに聞け」
星野は、むふふと笑いながら寝ている蒼を指差した。
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