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25 小舅vs恋人1
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鳴らない電話がある。
蒼のアパートには自宅の電話があるが、滅多に鳴ることはない。
今の時代、ほとんどの人は携帯にかけてくることが多いからだ。
月曜日。
本日は蒼も関口もお休み。
母親が退院してからと言うもの、顔を見せに行きにくくなっていた。
なぜって。
実家に帰ったら陽介もいるわけだし。
なんとなく気まずい気がしていたためだ。
あんまり顔を出さないのも変だし。
そろそろ行かなくては……と思いつつも足が遠のいていたのは事実だ。
今日は行かなくちゃかな……。
そんなことを思いながらもうとうとしていると、滅多に鳴らない電話のベルが鳴った。
びっくりした。
「っ!?」
視線を電話に向けると、起きだしていた関口も瞳を真ん丸くしていた。
そうだった。
彼が来てから1回も鳴ってないかもしれない。
もしかしたら、その存在さえ関口は知らなかったかも。
なんだか苦笑してしまう。
存在する意味があるのかな。
そんなのんびりしたことを考えていると、関口が受話器を取った。
「あ!関口!おれ、出るって!」
慌てて起きだすが遅い。
関口はそんな蒼を横目に受話器の向こうの人物と挨拶を交わす。
「もしもし、え?あ、おはようございます!」
あちゃ~と思う。
この電話に掛けてくる人物は一人しかいない。
今時、携帯じゃなくて、電話に掛けてくる人。
「あ、蒼は寝ていまして。お父さん」
起きています!!と蒼は抗議をするが、聞いてはもらえない。
「ええ、はい。……え!いいんですか?はい!是非!!」
関口は嬉しそうだ。
なんの相談だろう。
なんだか嫌な予感がする。
自分抜きの相談だなんて。
「はい!それでは、後ほど」
へ?
蒼は瞳を瞬かせて彼を見守った。
受話器を置いた関口は蒼を見る。
「おはよう、蒼」
「お、おはよう。なに?何だったの?」
「ってか、電話あるの知らなかったぞ!なんで教えないんだ」
「だって、そこに置いてあったし。気付かなかったのは関口でしょう?」
そっか、と妙に納得している関口。
わけが分らない。
それよりも、今の電話の内容だ。
「なんだって?父さん」
「あ、今日、遊びにきたらって」
「ふうん、……って!関口も行くの?」
「うん。だって、お父さんたってのお誘いだろう?今日はおれも用事ないし。蒼のお母さんにもご無沙汰じゃない。挨拶に行かないとね」
そんな!!
蒼はおたおたして、ベッドから落ちた。
「わわ!」
「蒼!?」
「痛い……」
変な体勢で着地したもんだから、蒼は顔をしかめる。
「蒼」
「あはは」
「用意しようか。お昼ご馳走してくれるって」
関口はうきうきだ。
本人自らが誘われて、返答をしているから、今更、蒼が電話をして断るわけにもいかないし。
陽介が関口に会いたがっているだなんて。
本人には言えるわけがない。
「蒼?」
いつもだったら母親に会うのを楽しみにしている蒼なのに。
今日は顔色が優れないことに気付いて、関口は首を傾げる。
「どうした?やっぱり、実家には帰りたくないの?」
そうだった。
事情は知ってもらっているし。
蒼は思わず頷く。
陽介とのことはある意味吹っ切れてはいるのだ。
今日の気がかりは関口を連れて行くってこと。
関口は蒼を抱きしめる。
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