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26 夏の秘密2
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「え?星野さんが?」
蒼の話に関口も驚いたようだ。
「珍しいねえ。星野さんがそんな様子だなんて」
「おれよりも関口のほうが付き合いは長いでしょう?星野さんって恋人とかいたりしたの?」
蒼は出来上がった冷やし中華をテーブルに置く。
「う~ん。いたよ。確かに。星野さん。ああ見えてモテるんだって」
ああ見えては余計だが。
意地悪な性格だし、蒼には理解できない。
「そうなの?」
「まあ、男から見る視点と女から見る視点は違うってことなんじゃないのかな?」
そうなんだろうか?
それとも。
星野はああ見えて、女性の前では猛烈に優しい男に変身するのではないか?
蒼は悩んでしまう。
「蒼?」
そんな彼の様子に苦笑して、関口は急かす。
「ご飯、食べようよ」
「は!そうだね。いただきま~す」
ご飯。
寝る。
読書。
蒼の3大至福のとき。
ご飯になると、彼は本当に幸せそうだ。
まあ、この3つで優先順位をつけるとしたら、読書、寝る、ご飯になるので、最初の欲求があるときはご飯なんて二の次になることも多いのだが。
「それより、花火に行けないなんて。残念だな」
関口は本当にがっかりした顔をしている。
「いつも行っていたの?」
蒼にとったら地元の花火でも、あまり縁がないから、こうも楽しみにしている人々が不思議でならない。
「そうだな。こっちにいた頃は、毎年行っていた」
「お父さんたちと?」
「まさか」
関口は笑う。
「あの人たちは本当に忙しいから。家族揃ってイベントに出かけるなんて滅多にないよ。友達とよくね。桃とか」
そっか。
関口はこっちにも友達がいるはずだ。
だって、昔はここに住んでいたのだもの。
「今は遊ばないの?友達」
ずるっと豪快に音を立てて食を勧めている関口は手を横に振る。
「そんなに気も合うってことなかったしな。みんな、ここを離れているみたいだ。桃の話だとね。別に。おれは、蒼がいればそれでいいんだけど?」
なんで急にそんな話になったんだろう?
関口は瞳を瞬かせる。
「え!あ、うん!おれも関口がいればそれでいい」
「どうした?蒼?」
「ううん。ただ、なんとなく。おれって、ほら友達少ないじゃん。だから、普通って、花火とか友達と見に行くものなんだなって思って。吉田さんとか、本当に楽しみにしているし」
関口と会ってからと言うもの、蒼は変わった。
今まで興味なんて湧かなかった人との交流について考えるようになってきているのだ。
「友達か~」
蒼は箸を止めて考え込む。
「蒼の友達はこの辺にいるの?」
「え!?」
蒼はもごもごする。
「なに?」
変なリアクションだ。
「いるって言えばいるんだけどな~」
「遊ばないの?」
「だって、もう何年も連絡とってないし。結婚しちゃっている子もいるし。もしかしたら、おれが一番遅いのかも」
蒼くらいだと、もうそんな時期なのだろうか?
「ごめんね。蒼」
「な、なに?なんで?」
「だって。おれと付き合っていたら、一生結婚できないじゃん」
「はあ?」
そんなことないよ!っと蒼は両手を横に振る。
「そういう意味じゃないって!おれ、結婚なんてしなくてもいいし。本当だよ?関口といられればいいし」
「蒼」
「うん」
蒼はそれっきり黙りこんで、食事に意識を戻す。
そんな彼をじっと見つめて、関口も食事を終えた。
「花火、灯篭流しは行こうか」
扇風機の回る音しか聞こえないくらい、静かな室内に関口の声が響く。
「へ?」
「あれ?あるよね。お盆の終わりに」
「え、うん。あるね」
「平日だったよね?そしたらおれも行ける」
「本当!?」
蒼は嬉しそうだ。
そんな彼を見ているだけで、関口も幸せになる。
「今回の花火大会だけは我慢してね」
「そんなつもりはなかったんだけど。分った!我慢する」
へへと笑う蒼。
寂しがりやの癖に意地っ張りなのはお互い様だなと関口は思う。
本当は一緒にいたいのに。
口に出せないんだから仕方がない。
イベント好きな関口にとったら嬉しい夏になりそうだった。
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