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28 新星現る1
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初めてだった。
ずる休み。
星音堂に入庁して初めてのこと。
蒼はいつも通りに目を覚ます。
目覚まし時計が鳴る10分前だった。
「……」
もう少し寝ていたい気持ちを押し込めて、身体を起こす。
今日は圭一郎と約束をした日。
9月最後の土曜日。
今日は当番だった。
誰かに変更してもらおうかと思ったが、探りを入れてみると無理そう。
急に具合が悪いとでも言って休むしかない。
今日は、水野谷が出勤しない土曜日である。
昨日まで、いきなりの予定がないかとひやひやして仕事をしていたが、幸い何の行事も入らなかった。
ということは、二人でも十分すぎる位だろう。
休むというのは気が引けるが仕方がない。
せめて、何も無い日でよかった。
今まで、ずる休み一つしたことがないじゃないか。
一回くらい、いいでしょう?
そう自分に言い聞かせて、気持ちを落ち着かせる。
今日は朝一で、有田が迎えに来てくれることになっていた。
ベッドで眠っている関口には秘密。
仕事だと思わせて、不自然じゃない時間に帰ってこないと。
圭一郎に念を押されて頼まれていたから、彼にはとても言えなかった。
ただ、着物を着て見せてあげればいいだけの話だ。
なんの問題もない。
だけど、嘘をつくのが苦手な蒼は、罪悪感で胸が痛かった。
ここのところ、出かけると言うと関口と一緒のことが多かったから、一人が不安だった。
蒼はいつも出勤するときと同じ支度をする。
さすがに、お出かけスタイルでは、怪しまれるから、スーツを着込み、そっと彼を見つめる。
『圭には絶対ばれないようにね。怒られてしまう。頼んだよ。蒼』
圭一郎の優しそうな笑顔が思い出される。
『7時30分に迎えをやるから。その車で来てね』
もう約束の時間だ。
関口が起きないうちに出てしまおう。
迎えに来られたところを見付かってしまったら、元もこもない。
そそくさと玄関を出た。
「ごめんね。関口」
なんだか罪悪感が生まれるが、仕方がないことだと自分に言い聞かせて玄関の鍵を閉めた。
かちっと軽い音が静かな室内に響く。
夢うつつだった関口は、その音で目が覚めた。
「あれ……?」
いつもだったら、声を掛けて出て行くのに。
目を擦りながら携帯を開く。
まだ7時30分少し前。
「今日は早いなあ……」
土曜日なのに……と、関口は思った。
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