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28 新星現る2
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蒼が階段を下りていくと、有田が立っていた。
「有田さん」
「おはようございます」
短髪の有田は、丁寧に頭を下げる。
朝早起きして東京からきたのだろうか?
大した休憩も取らずに、Uターンするのはなんだか悪いような気がした。
「おはようございます」
「お送りします。先生がお待ちです」
「あ、あの。有田さん。今朝、東京を出てきたんですか?」
「?」
有田は首を傾げながら、後部座席のドアを開け、蒼を促す。
「いや。あの。大変だなあと思って」
蒼の言いたいことを理解し、有田は笑顔になる。
「平気です。昨日の間にこちらに来ていました。正直申しますと、起きたのはつい先ほどでございます」
なんだ。
蒼は、ほっとして座席に座った。
「その方が良いだろうと、マエストロの配慮です」
「それならいいんです。おれはってきり……」
もごもごしてしまう。
関口ですら、東京との行き来は新幹線を利用している。
そのほうが断然早いからだ。
なのに、わざわざ車で迎えに来てもらうなんて申し訳ない。
「ご心配、ありがとうございます」
ルームミラー越しに有田の笑顔が見えた。
「あ。いえ。すみません。余計なお世話をしてしまって」
蒼は、まごまごしてうつむいた。
そうしているうちに車は走り出す。
こんな高級車乗ったことが無い。
父親の栄一郎だって医者で院長だけど、車は日本製の普通車だ。
そういうものにはお金を掛けない人だから……。
エンジンの音だって静かで、いつ発進したのかも分からないほどだった。
「お願いします」
「はい」
ぼんやりと遠ざかる我が家を見つめて、ため息が出た。
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