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31 始動1
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「これって、誰なんだろうなあ……」
昼休み。
事務所でくつろいでいる星音堂の面々。
「星野さん?」
ソファに横になって、今日発売の『月刊音楽仲間』に特集されている記事を眺めている星野に、吉田が声をかけた。
「いや、さ。これよ、これ」
星野が出したのは、ついこの前に行われたショルティのデビュー特集記事。
「これってさあ、誰かさんに似てない??」
「あ!!」
吉田は、声を上げてビックリする。
「なになに?」
そこに尾形も混ざる。
そんな騒ぎに、蒼は頭が痛い。
お弁当をそそくさと平らげてから、席を立った。
「蒼!!」
来た!!
「後ろ向いて」
「はあ??」
「早く!」
お弁当を机に戻して、そっと言われた通りにする。
「ぎゃ!!」
「やっぱり、蒼じゃん!これ!」
「違います!!」
「だって、あの日、休んだじゃん」
「ぐ!!」
雑誌を星野の手から取り上げて、がっかりする。
まさか。
こんなところに載ってしまうなんて……。
圭一郎が庇ってくれてはいるが、それが、ますます意味深な感じになっている。
「クラシック界の新星ショルティ現る!!えっと……なぜ、彼が日本をデビューの舞台に選んだかは謎であるが、師であるガブリエルが親日家であるということが起因しているのではないかと思われる。また、今回はショルティのバックアップとして、世界的に有名な日本人指揮者関口圭一郎が来日していた」
「すごい、関口のお父さんはやっぱり、すごいんですよねえ……」
吉田はしみじみと頷く。
「今回の公演では着物姿の日本人も駆けつけ、ショルティも親日家であることをアピール。今後も日本での演奏活動に期待が高まる。……だってよ!蒼」
星野はにやにやして記事を読み上げる。
「おれは!ただ、関口のお父さんに頼まれて……」
「で?」
「……もとはと言えば関口が悪いんです!やつは、おれの写真を海外演奏会の時にショルに見せたみたいで、それで」
「気に入られたんだ」
「違っ!!」
「蒼って、男にモテるんだな。女性の影はまったくないっていうのに。男の影はありありだ」
「尾形さん!!」
もう、たじたじである。
「でもさ、蒼の素性が載ってるわけじゃないし。大丈夫だろう?」
「はい。そこのところは、関口のお父さんがなんとかしてくれるみたいです」
案の定、蒼についての問い合わせは殺到したらしい。
この日本人は誰だって……。
冗談じゃない。
もう、ごたごたはごめんだ。
「蒼は、話題たくさんでおもしろいなあ」
今まで、黙って様子を聞いていた水野谷も苦笑する。
「課長!」
「いいんじゃないの?素性が分からない程度なら。これで、星音堂にまで問い合わせ殺到では困るけどね」
「確かに」
「お前、公務員失格だな」
「え!!」
愉快そうに笑う星野。
「スキャンダルを嫌うだろ?官庁は」
「そんな~!」
「みんな黙っていてやれよ」
星野が言うと冗談も冗談に聞こえないから怖い。
蒼はがっくり、肩を落とした。
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