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31 始動2
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「売られた喧嘩を買ったのか」
柴田はお腹を抱えて爆笑した。
「先生!!それどころじゃないですよ!」
「だって、仕方ないじゃないか。今更、引けないだろう?蒼を掛けた勝負だし」
「そうなんですけどねえ」
「ゼスプリって言ったら、結構、厳しいだろうなあ」
「4次まであるんですよねえ……」
「あるんですよねえって、知っていて受けたんじゃないのか?」
「はあ……」
市民オケが始まる前のひと時。
喫煙所でタバコを吸っていた柴田の隣で、関口は項垂れた。
「半年かぁ。あんまり時間がないな」
「はい」
「おれじゃあ、ちょっと役不足だな」
「先生?」
柴田は関口には視線を向けずに、天井を見る。
「頼むか」
「え?」
「おれの恩師に、お前を紹介してやる」
「先生」
「みてやりたいのはやまやまだが。いくら、留学していたって言ったって、更に半年で世界に通用するスキルを身につけるのは至難の業だ」
「はい」
「電話しておく」
「いいんですか?」
「うん。……変わり者だが、いいか?」
「もちろんです!!」
「そっか」
柴田は苦笑した。
「それから、お前、室内楽とソロやってみるか」
「え?」
「ゼスプリでは、含まれるだろう?その課題」
「はい」
「ちょうど、3ヵ月後に演奏会だし。それのソロやれ」
「でも」
「コンマスだろうが」
苦笑している柴田。
事務所の窓から見える蒼に手を振る。
「先生!」
蒼は気がついて、笑顔で手を振り替えした。
「焼きもちかあ~?」
「そんなんじゃないです!!」
「雑誌にまで載っちゃったしねえ」
「先生、気づいていたんですか?」
「そりゃね。星音堂に関係している人は、みんなピンと来たんじゃないの?」
「はあ……」
「盛りだくさんだけど、蒼を守りたいんだったらやるしかないね」
苦笑して、タバコを灰皿に落とした柴田は立ち上がる。
「さ、練習練習。今日から市民も修行の場だぞ!」
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