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33 ちゅんちゅんちゅん4
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翌日。
蒼が出勤して行くと、星野がもう出勤していた。
ビックリした。
彼が、そんなに早く出勤してくることはないのに。
「どうしたんです?」
思わずそう聞いてしまう。
「なんだよ。早く来ちゃ悪いのか?」
星野は苦笑する。
「いえ。珍しいなと思って」
「まあね」
彼は何かの図面を見ている。
思わず蒼も首を伸ばしてそれを覗き込んだ。
「それは?」
「これ?」
星野は図面を両手で広げて蒼に見せた。
「これは鳥小屋だ」
「は??」
なんだ??
蒼は瞳を大きくする。
そこに吉田も出勤してきた。
「おはようございます……って、星野さん!!どうしたんです?」
蒼と同じ反応。
二人は顔を見合わせて笑った。
「実はな。星音堂の中庭に、この鳥小屋を作る計画が持ち上がっているんだ」
「鳥小屋?」
吉田もぽかんとしている。
「見てみろ」
星野は、得意になって鳥小屋の図面を見せた。
ご丁寧に完成図までついている。
鳥小屋といっても中で鳥を飼うのではなく、餌を置く仕組みになっている。
上には屋根がついていて、雨や風でも餌が飛ばされたりしない仕組みだ。
屋根の下には、鳥がとまれるようになっている。
そんなには大きくなさそうだ。
「これ、星野さんが書いたんですか?」
図面は手書きだ。
蒼も目を丸くして彼を見る。
星野は得意そうにしていた。
「まあな」
「へ~!!」
「意外な特技ですね!!」
「意外とはなんだ、意外とは」
吉田は頭をこつんとやられた。
「だって~」
「でも、これって課長は?」
「そうそう。これは課長から頼まれたんだって」
「え?」
「なんでも、これからは星音堂もいろいろイメージアップする作戦らしい。こういう小さなところから始めようじゃないかってことらしいぞ」
「へ~」
蒼は感心した。
お役所も、ただ何もしないではいられない時代になってきたというところか。
最近ではちょっとずつだが、市内には演奏会用のホールや、多目的ホールができている。
いくら公務員といったって、利用してくれる人が少ないのでは運営が滞ってしまう。
サービス色を前面に出すのが、今年の方針なのだろう。
「そういえば、今度から年中無休にするって話も聞きました」
吉田の言葉にビックリする。
「え!!」
「そんなに驚くなよ。いまどき、定休日なんて作っていたら、利用してもらえなくなっちゃうしな」
「休みが減っちゃうんですか?」
「まさか。それはないって。交代制になるってことだろう。しかし、もっと休みが不規則になるんだろうな。なんだか、本当にサービス業だな。おれら」
星野の言葉に戸惑いは隠せない。
そうなんだ。
これからは、月曜日が休みじゃなくなるってことは。
関口との時間がもっと少なくなってしまうのだ。
そう考えるとちょっぴり寂しい。
今でもかみ合ってないのに。
これからどうなっていくのか。
本当に不安になった。
「おはよう!」
そんな蒼なんてお構いなしで、設計図を見ている二人の元に尾形や高田も出勤してくる。
一同は、設計図を見ながらわいわいと雑談を始めた。
「おい、ここはもっとこうしろ!」
「ここの色は赤がいいんじゃないか?」
それぞれが勝手なことを言い始めて、収集がつかなくなりそうになったとき、水野谷が出勤してきた。
「おはよう!!」
今日は、鳥小屋のことで持ちきりなのだろう。
とても昨日の市民合唱のことを言う暇もない。
まあ蒼は約束もしたし、言うつもりもなかったが。
水野谷には確認しておきたかったのだ。
なんだか揉めているのに。
自分たちのことまで頼んでしまってよいのだろうか?
蒼は、大きく息を吐いて席に着いた。
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