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36 四重奏6
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「だから!!ハッキリしなよ!」
いつもおとなしい雪田が、ダンッとビールジョッキを机に叩きつける。
居酒屋。
飲み会は大変な騒動に発展していた。
「へ?」
ビックリしたのは関口だけではない。
佐伯も横田も唖然だ。
「関口!ハッキリしなさい!熊谷くんと付き合っているのか、付き合ってないのか!」
「雪田。大丈夫か?」
おろおろしている佐伯は、彼女の肩に手を添えるが、軽く振り払われてしまう。
「触るな!」
「ひょえ~!」
「あたしは今、関口と話している訳」
「す、すみません!」
居酒屋はがやがやしていて、雪田の乱心は他の客には分からない。
「関口、どうなのよ!」
横田の制止なんて振り切って、雪田は関口の胸倉を掴んだ。
こんなに酒癖の悪い子だったなんて。
佐伯も教えてくれればいいのにと思う。
「いつも、こうなのか?」
関口は、こっそり隣に座っていた佐伯に囁く。
「いつもって訳でもないんだけど。たまにね」
二人で、こそこそしているのが気に食わないのだろう。
雪田は怒り出す。
「おい!そこ!なにこそこそしてんだ、バカやろう!お前が言わないなら、ここに熊谷呼べ!」
胸倉を掴んだまま、雪田は腕を振り回すものだから、関口も一緒に振り回されてしまう。
「わわわわ!」
「佐伯!関口の携帯取って!」
「へ?」
「おい!雪田!!」
「いいから!」
ここまでくると、かなりご迷惑様の酔っ払いである。
佐伯は慌てて関口のポッケから携帯を取り出した。
「おい!佐伯!恨むぞ!!」
「だって」
「佐伯くん!」
横田もあたふただ。
「熊谷を呼べ!」
「ごめん!関口」
「おい!お前ら!なんなんだってんだよ!?もう付き合わないぞ!こんな質の悪い酔っ払いには」
「うるさい」
完全に目の据わっている雪田は怖い。
蒼ごめんよ~と思いながらも関口は黙る。
「いいのか?関口」
電話帳を見るのは忍びない。
佐伯は携帯を開く。
「わかったって!蒼を呼べばいいんだろう?蒼を」
人に携帯をいじられるなら、自分でやったほうがいいと判断した関口は佐伯から携帯を取って蒼に掛ける。
出ないなら出ないほうがいいのだが。
『はい?』
数回のコールの後にあっけらかんとした蒼の声。
今日も文化祭の練習だろうに。
元気がいい。
「あ、あのさ。悪いんだけどさ……」
関口が言いにくそうにしていると、携帯を雪田が取り上げる。
「もしもし!」
『は?へ?』
「熊谷くんでしょ?今すぐ出てらっしゃい!場所は駅前の居酒屋パイナップル!いい?必ず着なさいよ!じゃないと関口を帰さないんだから!」
そう言い捨てると雪田は携帯を切った。
「あ~あ!」
「こら!雪田!」
関口はいい加減に呆れて、彼女の名前を呼び捨てにする。
面倒だったのだ。
「あ!今、雪田って言った~!!許可もなしに!」
女の子は面倒くさい。
関口は大きくため息を吐いた。
「おい、佐伯、お前の彼女だろう?なんとかしろって」
「え!!」
そこで、佐伯も雪田も動きが止まる。
「あれ?違うの?」
「い、いや。それは、その」
「な、なに言い出すのかなぁ……関口は……」
自分のことは呼び捨てにした!なんて怒っているくせに、もう関口のことは呼び捨てだ。
「そうだよね。あたしも気になるところだわ」
横田は関口に同意する。
「人のこと言う前に、まずは己のことを明かさないとな。ささ、吐け、吐け」
「何を言う」
明らかに否定しようとする佐伯。
「女の子に対して、そんな態度でいいと思っているのか?佐伯」
今までの仕返しだ。
鬱憤を晴らすように佐伯をいじめる。
「ぐ」
「どうなんだよ?雪田」
黙っていた彼女はじろっと関口を見る。
「!?」
「付き合っているからってなんなのさ!なにが悪いのよ!!」
「悪いなんては言ってないじゃないか。おれはこそこそやっているのが気に食わないって言ってんだよ。おれら四人で演奏するってーのに。秘密はいかん、秘密は」
得意になって言うと、雪田はにんまり笑う。
「あ~、お言葉ですけどね。それをいうなら関口もだよ!」
「へ?」
「熊谷と付き合っているなら、付き合っているって言うべきだわ!私たちに秘密を持っているのは関口じゃないのさ!練習の後に急いでどこに行ってるのよ~!吐け~!!」
もう収拾は着かない。
ここまで来ると関口は逃げ出したい。
蒼が来る前になんとか。
彼は自転車で来るだろうか?
だったらもう少しかかるだろうけど。
そう思っていると、蒼が顔を出した。
関口を帰さないなんて言われたからビックリしたんだろう。
「関口?」
外は雨なのか。
蒼の肩もかすかに濡れていた。
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