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36 四重奏7
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「ごめん!蒼」
関口の言葉に覆いかぶさるように、雪田が蒼に詰め寄る。
「ちょっと!あんた。関口のなんなのさ」
「へ?」
「雪田~。まあまあ落ち着いて」
佐伯は必死に横で彼女の腕を引っ張る。
「あの。関口?」
蒼は困っている。
急に呼び出されたと思ったら、問い詰められた。
どうなっているのだ?
メンバーを見ると、アンサンブルのメンバーのようだが。
やっぱり、この前の廊下で話しているのを見られていたからこんなことになってしまったのだろうか?
そうなると、星音堂で言葉を交わすことも控えたほうがよいのだろうか?
そんな不安が脳裏を過ぎる。
困って関口を見ると、さすがの彼も諦めたような表情をして雪田を見ていた。
そして。
「そうだよ。雪田。おれは蒼が好きで、蒼と一緒に住んでいる。これでいいんだろう?お前たちには何一つ秘密はなくなった。満足か?」
関口は静かな声で言い放つ。
さすがに暴れていた雪田も、一瞬動きを止めてから席に座った。
「関口」
蒼はビックリして関口を見る。
席に座った雪田は、そのままテーブルに額を付けた。
「それで、それでいいんだってばさ~。それで。お幸せにだよ~……」
満足したのか。
彼女はそのまま、眠りに落ちた。
「寝ちゃった」
隣で様子を見守っていた横田は苦笑した。
「な!なんだってんだよ!人がせっかく告白したっていうのに!」
関口はぷりぷりだ。
「まあまあ。雪田は雪田で、思うところがあったんだと思う。おれも現に、お前がもっと自分のこと話してくれたら、もっと近付いて来てくれたらな~って思ってたもん」
佐伯もうっすら笑って関口を見る。
「まあ、熊谷さんも座ってください。すみません。急で」
佐伯に促されて、蒼は席に座る。
アンサンブルチームはどうなっていたんだか。
関口の話だとうまくいっているなんて聞いていたのに。
結構バラバラだったのかな?
「なにか飲みます?」
関口は、蒼のオーダーをとっている横田を見ながらいろいろなことを考える。
「おれも悪かったと思っている。佐伯たちを信用していないとか、そういうんじゃないんだ」
「関口」
「今まで、おれは音楽の中でしか生活してなかったから。周りはみんないい意味でのライバルだ。そんなに自分の話をして得になる事って少ないのが事実だ。おれにだって、いろいろ話せる友達はいるけど、本当に少ないし。こんな性格だから、知り合ってすぐの佐伯たちに、いろいろ話せるような状況ではなかったことだけは、分かっていてもらいたいんだが」
そうだそうだ、と蒼は思う。
未だに関口の事をちゃんと分かっているわけではないのだ。
蒼だって。
そういう奴なんだもの。
仕方がないと思う。
「そうだよな。うん。そうだ。特にこういう事情じゃね」
佐伯は苦笑して、関口と蒼を交互に見る。
「まあね。隠すことでもないんだけど。お互いに支障を来たすこともあるからな。本当に内輪の人にしか話していない」
「正解だと思うぞ。おれだったら、こんなに問い詰められても口割らないかもな」
「でも、いいと思う。あたし」
横田は優しく蒼を見る。
「熊谷さん、だっけ?とっても優しい人だし。関口くんにはぴったりだね」
「へ?」
女の子にそんなこと言われるなんて嬉しい。
蒼は照れた。
「そんな」
「なに照れてんだよ。蒼」
一瞬むっとする関口。
「そうそうヤキモチやくなってば」
一同が笑うと、雪田が寝言を言う。
「ずるいよ。関口。ずるい……」
「またこの子は」
横田が苦笑して、彼女の肩にカーデガンを掛けると、むにゃむにゃしていた雪田は、そのまま寝息を立てる。
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