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そして。
初めての合同練習の日。
それは小ホールで行われた。
遅番である尾形は、事務室にメッセージボードを用意する。
『職員不在です。御用の方は小ホールまで』
こうして職員全員も小ホールに向かう。
みんなドキドキだ。
今までの練習では、自分たちしかいなかったから。
他の人に聞かれるのも緊張するし、伴奏に合わせられるかも心配だった。
小ホールからは弦楽器の音が響いている。
今日は日曜日だから、午後から伴奏隊はここで練習をするといっていた。
「ずいぶんイメージが変わるんだろうなあ」
吉田も楽譜を握り締めて、表情を固くしていた。
「横川先生の指導も緊張するな」
「横川先生……」
吉田の隣で蒼は、その名前を繰り返す。
黒田と揉めていた横川。
一度見かけた彼は、素敵な人に見えた。
だけど、関口と同じタイプだし。
きっと音楽に対しては、厳しいに違いない。
どっちにしろ緊張することには変わりない。
水野谷を先頭に小ホールに入ると、ステージの上には合唱団が並んでいた。
小さいホールなので壇上に合唱団が乗っただけでいっぱいなので、合唱団も人数を減らしてくれているようだった。
関口たちは、ステージから降りてすぐ下のところに並んでいた。
「みなさん!こんばんは!」
水野谷の声に一同は静かになる。
「本日はお忙しい中、お集まりいただいて本当にありがとうございます!」
なんだか堅苦しい挨拶だ。
星野たちは苦笑している。
「みなさんの大切な時間をいただいて、今回やっと星音堂の文化祭を迎えられることになりました。本当に、ご協力に感謝いたします!そして、本番までもう少しお付き合いください!」
水野谷は頭を下げる。
蒼たちも慌てて真似て頭を下げた。
客席に座っていた横川は、笑顔で水野谷を見る。
「じゃあ、先生。どうか、宜しくお願いします」
横川は優雅な身のこなしで立ち上がった。
「こちらこそ宜しくお願いします。私も楽譜をもらったのが先週だったので、少々読み込みが足りないですが、これからはみんなで作り上げましょう」
やっぱり。
蒼は笑顔の横川を見て確信した。
この人は優しい人だ。
ふとステージの上を見ると黒田もニヤニヤしていた。
そして、関口も苦笑している。
そうだった。
関口との共演。
初めてだ。
自分が音楽をやるようになるなんて。
思ってもみなかったから。
そう考えると嬉しい。
こんなチャンス、もうないかもしれない。
関口との共演なんて。
関口を笑顔で見返した。
「じゃあ、始めよう」
横川の声に一同は位置に着く。
「ソロは自由に歌って。伴奏はそれに合わせること。合唱が入る部分は指揮にあわせてくれ。じゃないと合わなくなってしまうからね」
横川の適切な指示が飛ぶ。
まずは動きなしで歌をあわせる。
「じゃあ、最初から!」
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