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本番は金曜日。
まるっきりの週末は、予定が目白押しなので押さえられなかった。
前日になると、さすがにそわそわもピークに達する。
当日は、午後からリハーサルが入るので、職員は全員でそちらに参加する予定だった。
職員が不在になってしまうと、営業が回らない。
今年も例年通り、本庁から手伝いを要請して2人に待機してもらうことになっていた。
市としても、市民の皆様に楽しんでもらう行事には力を入れているので、星音堂の文化祭には協力を惜しまないようだった。
本番までの数日。
職員メンバーたちは相変わらず部屋を一つ貸し切って、自分たちだけの調整を行っていた。
本番当日前の最後の練習で最悪な終わり方をした蒼だったけど、関口のおかげで立ち直れていた。
星野たちも蒼が元気になってきているのでほっとしたのか。
あのことには特に触れないでいた。
「出来た!」
当日の用意をしていた吉田は嬉しそうに立ち上がる。
「どれどれ」
水野谷は最終チェックだ。
明日の今頃はステージに立っているだろう時間だ。
「これが明日のお弁当の注文票です。控え室のお茶とコーヒー、ゴミ袋。で、こちらが当日の部屋の標識。バイト代はこちらに用意しました」
「バイトは何人になる?」
「受付に4人、花束係りに2人、ステージ設定に4人です」
「彼らのお弁当も注文したかい?」
「ええ。ばっちりです!バイト10人、職員7人、先生が2人、市民合唱が30人、市民オケが45人です」
「弁当は16時までに届けてもらえるのだろうな?」
「はい!手配済みです!」
嬉しそうに頷く吉田。
やってやったという満足感から来る笑顔だろう。
水野谷は苦笑した。
「よし!じゃあ明日に備えて。今日はゆっくり休むこと」
彼の言葉に一同は苦笑した。
とうとう明日。
蒼は目の前の書類から視線を外して外を見る。
もう真っ暗だ。
明日、仕事が出来ない分、今日はみんなで遅番をしていたのだ。
もう時間は9時になろうとしている。
今日、関口は桜のところに行くって言っていたから。
自分も寄ってみようか?
なんだかどきどきして帰っても眠れる気がしなかったのだ。
「そろそろ片付けよう。みんな帰る準備だよ」
水野谷の声にしたがって一同は片付けを始めた。
星音堂から桜の店までは歩いて30分くらいのところにある。
自転車だと10分くらいだけど。
なんとなく、飲んだ後の自転車は危ないので、職場においておく。
帰りはぶらぶら歩いて帰ってくればいいかな?なんて思いながら夜道を歩く。
お店の近くまで行くと、にぎやかな声と音楽が外にまで聞こえていた。
中に入ろうと、取っ手に手をかけたとき。
蒼は後ろから呼び止められた。
ゆっくり振り返ると、そこには神崎が立っている。
彼女も常連になっているのだろう。
「あ、こんばんは」
なんだかこの前の件があったから気まずい。
蒼は思わず視線を伏せた。
「蒼ちゃん」
彼女は優しく蒼を見ている。
彼女も悪気があったわけではないのだろう。
微笑している神崎を見て、蒼も思わず微笑んだ。
「中に入るんでしょう?少し、話しない?」
「ええ」
二人は連れ立って店内に入った。
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