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40 文化祭の夜に4
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翌日。
星音堂文化祭のことは新聞に掲載された。
本庁に呼ばれた水野谷は市長からじきじきのお褒めの言葉を頂き、また来年も頑張るように言い渡されたという。
「本当ですか?」
「それはすごい!市長からお褒めの言葉を頂いたなんて!」
尾形は嬉しそうだ。
翌日もいつもどおり出勤だった職員たちは、さすがに疲れている様子だったが、この吉報に元気を取り戻す。
「そうだ。星音堂の頑張りはよく分かっている。これからも市民のために面白い企画を立てていってもらいたいと話していたぞ。来年は市政100周年で記念イベントなんかも多いから楽しい文化祭を考えるように頼まれた。しかも、来年はもう少し予算を組んでくれるそうだから、盛大にやれそうだ」
水野谷は得意になって話している。
「楽しかったけど。また大変だな。こりゃ」
ぼそっと呟く星野の言葉。
それがみんなの本音だろう。
隣で聞いていた蒼も笑う。
だけど。
もうひとつ嬉しいことが。
「って言うことは。課長は来年も星音堂で頑張れってことですよね」
蒼の言葉に一同は笑った。
「蒼~!課長が出世しないのが嬉しいのか?」
吉田の意見はもっともだ。
蒼は、今更気づいたのか。
はっとして水野谷を見る。
「す、すみません!ただ、おれは。みんないての星音堂だから。課長がいなくなっちゃったら寂しいなって思っていて」
おどおど言い訳。
氏家は優しく言う。
「分かっているって。課長だって。蒼の意図くらい」
「そうそう。吉田が余計なことを言っただけだろう?」
「ええ!おれが悪いって言うんですか!?」
ぶうぶう文句を言う吉田。
水野谷は笑う。
「いや。おれも嬉しいよ。ここにいると楽しいからな。確かに本庁に戻ったら出世かもしれないけど。ここにいるのもまあいいじゃないか。もう年も年だしね。そうそう出世は望まないさ。それよりもここでみんなの喜ぶ企画をしたりするのがおれは好きだな」
「課長」
「それにおれがここにいてもいいって言ってくれる部下を持てたことが幸せだ。上司冥利に尽きるさ」
水野谷は嬉しそうにして立つ。
「よっし!今日はおれのおごりだ!昼食、食べにいくぞ!」
「やった~~!!!!」
事務室の中はにぎやかになる。
「さっさと食事にいけるようにしたくしようぜ~!」
こうして無事、星音堂の文化祭は終った。
季節は冬。
雪もちらつき始める冬の始まりだった。
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