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41 冬のジェラシー3
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「熊谷さん」
「それに、おれはあなたのこと知らない」
「……」
女性はぐっと息を呑む。
蒼の容姿からは想像できない対応だったのだろう。
言葉も出ないようだった。
「すみません」
蒼は頭を下げる。
「蒼!」
すると、待ちきれなくなったのか。
関口がやってきた。
彼は蒼に声をかけてから女性を見て歩みを止めた。
「関口」
女性はぎょっとしている。
「安岐……!?」
「え?なに??」
蒼はきょろきょろして二人を見る。
「知り合いなの?」
「あ、ああ。同じオケので。そんで、あの」
関口は言葉を切って続ける。
「彼女。おれが高校のとき付き合っていた子なんだ」
蒼は、はっとして顔を向ける。
すると安岐はむっとした顔をしていた。
今までのそれとは違う。
「な、どういうこと?」
安岐は開き直る。
「どうもこもないわよ!関口くんとあんたが怪しいからさぐりを入れようとしただけじゃない」
「へ?」
「は?」
関口も目が点だ。
今まで安岐は関口の前でも女の子らしいところしか見せなかったから。
「なによ!あたしとこの男のどっちがいいっていうの?関口くん?」
「安岐」
「あたしのことは軽くあしらっといて。なによ。こんな子ばっかり大切にしちゃってさ」
安岐はどんと蒼を突き飛ばす。
「わわ!」
「蒼!?」
小柄な蒼は、ぽかんとして安岐の様子を見ていたせいか、ちょっと突き飛ばされたら尻餅をついた。
「安岐!乱暴するな!」
ぽてっと座り込んだ蒼は呆然としていた。
関口は怒る。
「何よ!何よ~!」
わ~っと泣き出す安岐。
困ったものだ。
「なんだってんだよ?何か言いたいことがあるならおれに言えばいいだろう?毎週顔も合わせているんだから」
「だって!最近は佐伯くんとかとばっかり話してあたしのこと見向きもしてくれないじゃない!帰りだって、いっつものこの蒼って子とばっかり。酷いよ!関口くん!」
「安岐……」
蒼は尻餅をついたまま彼女を見上げる。
本当に関口のことが好きなのだろうな。
そう思う。
必死だ。
関口になんとか振り向いてもらおうと一生懸命なのだろう。
そんな彼女の気持ちはよく分かる。
自分だってもし、関口に見捨てられたら。
彼女みたいなことをするかもしれないのに。
なんだか胸の奥が苦しくなった。
「……」
「お前のことを避けていたわけじゃないんだ。ただ。もうお前のことを好きとか、そういう気持ちはないんだ。友達だと思っている」
声色を低くする。
静かなその声に安岐も黙った。
「今は蒼が好きなんだ。おれは蒼がいればそれでいいんだ。すまない。今のおれに必要なのはお前じゃなくて蒼だ」
そんなはっきり言われても。
蒼は何度も瞬きをして二人を見る。
安岐も一瞬と惑ったような顔をしたけど、関口を見て蒼を見た。
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