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42 仕事納め4
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嬉しそうに瞳を輝かせている二人を見ると意地悪したくなる気持ちもなえた。
星野は肩をすくめて見せる。
「仕方ね~だろ?お前ら二人だけにおれの大切な鳥小屋を任せてはおけないからな」
「またまた~」
蒼は大きく笑う。
その声が中庭に響いてこだました。
「わわ!」
「蒼、笑いすぎ」
「お前、ミュージカルやってから声量アップしたよな?」
「そ、そっかな」
雑巾でギュウギュウ拭きながら3人は話す。
「まさか、あっちの声もアップとか?」
星野の冗談に吉田は爆笑する。
蒼は顔が真っ赤だ。
「な、ななななッ!」
「なに想像してんだ~?蒼?おれはハッキリ言ったわけじゃないぞ」
「ほ、星野さんってば!」
「蒼、赤くなっちゃって♪」
吉田はいつまでも笑っていた。
「ひ、ひどいです!おれ、せっかく手伝いに来たのに……」
「あれれ~。恩着せがましい態度はいかんねえ。蒼君」
「そうだよ~。せっかく手伝いに来てくれたってなにも出ないからな」
「ち、ちが!おれはなにかが欲しいとかじゃなくて。ただ、吉田さんの態度が……」
真剣に弁明している蒼をじっと見る吉田。
「おれがなんだって?」
「い、いえ。別に」
二人のやり取りに星野も爆笑した。
「本当に蒼はからかいがいがあるな!関口も退屈しないだろうな」
「は、はあ?」
からかわれてばっかりで面白くない。
蒼はぶすっとふくれた。
「ねえねえ。蒼は関口と一緒にいるときってどんな話してるの?」
「え?」
吉田は興味津々だ。
「関口のプライベートって謎じゃん。どうなのさ?」
「どうって」
おどおどして色々思い返してみる。
二人でいたって大した話はしていない。
「なにも……」
「なにもって?」
「えっと。本当にあんまり話してないかも……」
はっきりこんな話をしています!って言い切れない辺りが辛い。
関口の頭の中はいつも音楽のことでいっぱいだから。
楽譜を見ているか、黙って音楽の構想を練っているか。
どっちかだ。
そう考えると、自分が一緒にいる意味って何かあるのかな?
しゅんとなってしまう。
しかし、星野はますます蒼をからかった。
「吉田もそんなこと聞くなんて野暮だぜ!恋人が二人いたらすることなんて決まってんだろうが」
「そっか!すみません」
二人は顔を見合わせて笑っている。
「あははは」
「ぐふふふ~」
いつもだったらすぐに反論する蒼なのに、今日は反撃がない。
「あれ?」
違和感を覚える。
そろそろっと彼の方を見てみると、蒼は吉田の使っていたバケツを持ち上げて目を光らせていた。
さすがに蒼もキレたらしい。
「げっ!」
「蒼がキレたッ!」
「あなたたちって人はーっ!!」
蒼はバケツを思い切りひっくり返して二人に汚水を浴びせた。
「ひゃ~!」
「蒼がご乱心だぁ~!」
事務所にいた氏家や尾形が駆けつけたときには、星野と吉田はびっしょりになっていた。
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