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43 年越し温泉旅行4
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「こういう場所、初めてだから楽しみです!夕食はどうなりますか?」
蒼は明るくおばちゃんに声をかけた。
「6時にお部屋にお持ちしますからね。宜しくお願いします」
「はい」
にこやかに退室していくおばちゃんを見送って関口はすまなそうに視線を向ける。
「こんなところだなんて思ってもみなくてさ」
「なに?いいじゃん。初めてだよ。おれ、こういうところ。楽しみだね」
蒼はがっかりしてしまっている関口に笑顔を向けた。
「スリリングだね!紅白も楽しく見られそう」
「蒼……」
荷物を置いてから蒼はあちこち物色する。
本当に襖は開かないのだろうか?
ちょっと手をかけてみると、襖は簡単に開いた。
「へ?」
隣に入っているカップルと目が合う。
「し、失礼しました!」
ばちんと閉めるとあちらからも苦笑が洩れる。
お互い、この環境に苦笑いなのだろう。
みんな一緒だ。
そんな様子を見ていた関口は気分を入れ替えるしかないなと思った。
平凡な年越しが嫌で脱出してきたんだもの。
文句は言えない。
どんなところでもいいのかもしれない。
ここまできたらこの状況を楽しむしかないだろう。
こうして蒼と一緒に過ごせる時間が一番なんだから。
「最初にお風呂入ろう~!お風呂」
蒼はにこにこしてタオルを取り出す。
「そうだな」
「そうそう。夕食までもう時間ないじゃん。まずは1回目入って。ご飯食べて。もう1回入って。紅白見て。んで寝る前にもう1回入って。明日の朝も入るでしょう?えっと……何回だろう?」
指を折って数えている蒼。
苦笑してしまう。
「どんだけ入る気してんだよ?おれはそんなに入れないぞ」
「いいもん。一人でも入れるもん」
ぷんと顔を背けてタオルを握る。
「早く!関口!」
「はいはい」
「急がないとご飯になっちゃうよ~」
蒼に引っ張られて廊下に押し出された関口は奥から歩いていてきた男と鉢合わせになる。
「あっと、すみませ……っ!?」
「ん?」
関口が言葉を止めたので、蒼も部屋から顔を出して男を見た。
「げげ!」
男は慌てて身体を引いたが遅い。
「ええ!?星野さん??」
蒼は、ぽかんとして星野を見上げた。
「な、なんでお前たちがここにいるんだ?」
「なんでって……。大晦日をここで過ごそうかと」
「……」
星野はすっかり浴衣なんて着てくつろいでいる。
顔も赤いし。
なんだろう?
珍しく取り乱している様子だった。
視線が泳いでいる。
「星野さんこそ。どうしたんですか?」
関口の質問に蒼ははっとした。
「そういえば大晦日はデートって言っていませんでしたっけ?」
「そ、そんなこと言う訳ないだろうが!」
「そっかな~」
蒼は怪しいとばかりに星野を見る。
昨日、いじめられた仕返しだ。
30日の大掃除のときは偉い目にあったんだから。
タジタジになっている星野。
なんだかどんどん後ろに下がっていく。
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