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45.Overture3
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『キミはやっぱり桜の音に似ているね』
一次予選の曲合わせをしてミハエルは笑う。
『そ、そうですか?』
そうかな?
桜の音を聞いたことがないんだから、それは分からないけど。
弦を下ろしてミハエルを見る。
関口もビックリしていた。
彼の音。
素敵だ。
大柄な彼の姿からは想像できないような、繊細な音だった。
しかも、伴奏慣れしているんだろう。
関口の呼吸にぴたり合わせてくれた。
弾きやすい。
長年付き合っている桃とは、自然に呼吸が合うけど。
初対面の彼とこんなに合うなんて思ってもみなかった。
これがプロの伴奏家と言うものか。
『よし。もう一度お願いしていいかな?おれもキミの呼吸をもっと知りたいから』
『は、はい!』
関口は慌ててヴァイオリンを構える。
その様子をソファで見ていた桜も苦笑している。
「ミハエルは人に合わせる能力が天才的なのよ」
独り言のように呟いてから、目の前のワインを上げた。
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