アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
46.新しい道6
-
昼食を終えた昼下がりほど辛いものはない。
あっちでもこっちでも睡魔と戦いながらの作業。
社会人として、欲求との戦いは必須だ……しかし。
吉田は完全に負けてしまっていた。
こっくり、こっくり船をこいでいる。
最初に気が付いたのは蒼。
ぶっと吹き出す。
いつものことながら、今日は明らかに敗北するのが早い。
「あちゃ~。こいつは証拠にもなく」
ちらっと水野谷のほうを見ながら、隣の席の尾形は笑う。
「早いですね。今日は。まだ2時ですよ」
「本当だ。いつもだったら後30分は粘るのにな」
星野も話しに混ざる。
ちょっと離れた席に座っている水野谷はまだ気付いていない。
そのうちに、高田と氏家も話しに混ざった。
みんな眠気覚ましにちょうどいいと思ったのだろう。
「何かあったんじゃねえのか?」
「最近、吉田もお年頃だからな」
「年下の蒼に先を越されてショック受けてたもんな~」
尾形の言葉に一同は笑いを堪える。
「先を越すだなんて……」
蒼はおどおどする。
「そうそう。永久に恋人なんか出来なそうだった蒼に恋人が出来たってことはえらいショッキングな出来事だな」
星野も笑う。
蒼はむ~っと星野を見る。
そういう自分のほうがショッキングなことをしているじゃないか~っと抗議したくなってしまう。
だけど、高校生と付き合っているなんて本当にまずい。
バラすわけには行かないのだ。
そんな蒼の様子に彼もますます笑った。
「もしかして吉田にも恋人でも出来たんじゃないのか?」
氏家の言葉に尾形が反論する。
「まさか!こいつに出来る訳がないですよ」
「だけど、そう言われていた蒼だって今では……」
「そうそう。吉田もひょっとしたら、ひょっとするかも知れないぞ」
高田も同意した。
「そうですかね~?」
最初はひそひそ声で話していたが、段々興奮してくると声は大きくなるものである。
いつの間にか賑やかになってしまった事務室。
水野谷の声が飛んだ。
「こら!喋ってないで仕事、仕事」
「あ、すみません。課長」
「あはは」
笑ってごまかしてから仕事に戻る。
だけど、吉田はこんな騒ぎがあってもいつまでも眠っている。
まさか自分が話題の的になっているなんて知る由もない。
水野谷はふ~っと息を吐いてから仕事に戻ろうとして、睡魔に征服されている吉田を発見した。
「尾形。そこの船こいでいる奴。つまみ出せ」
半分冗談だけど、尾形は便乗する。
「あいあいさ~!」
彼はがっつり吉田の襟首を掴んで引っ張った。
「わわっ!」
ビックリした彼は顔を上げてきょろきょろした。
「何!?何!!??地震!??」
「地震じゃね~し」
辺りを見渡すと、みんなが自分を見ている。
しかも、水野谷まで。
「吉田。寝ていた時間分、残業な」
「ええ!寝てなんていませんっ!」
あくまでしらばっくれているが、尾形は意地悪だ。
「じゃあ、今までおれたちが何の話していたか言ってみろよ」
「ぐっ……な、なんですか?今日も残業嫌だな~とか?」
「ぶぶ~。はずれ」
「へ?」
「お前が寝ているって話だよ」
「……」
言葉に詰まってしまう彼。
可哀相だが仕方がない。
水野谷は自分の見ていた書類を抱えて吉田のところに持ってくる。
「じゃあ、これを仕上げたら寝ていたことはチャラにしてやろう」
「え!こんなにぃ?」
「文句を言うな。文句を」
ぶ~ぶ~膨れている彼。
だけど、この事件のせいで、他の職員の眠気は吹っ飛んだ。
明日はわが身。
眠くならないように心がけないといけない。
職員たちは自分の仕事に戻った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
328 / 869