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48.過去との対峙4
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両親がやってきたのは夜8時を回った頃だった。
蒼は検査もすっかり終えて、病室でうとうとしているところだった。
両親が来たら検査結果も説明してくれると言っていたし。
なんだかほっとしたら眠くなってしまったようだった。
物音で瞳を開けると、二人は心配そうにベッドサイドに立っていた。
「蒼」
「あれ?」
「星野くんから電話もらって。ビックリしたよ。車と接触したんだって?」
「うん……」
ほっとした。
栄一郎が蒼の頭を優しく撫でてくれた。
「おっちょこちょいなんだ。ごめん」
「蒼は誰かに似ているからね」
苦笑している栄一郎。
彼の後ろにいる空は顔を上げた。
「それはないでしょう?あなた」
「だって、空はおっちょこちょいじゃない」
「もう」
のろけられても困る。
蒼は二人の会話をさえぎった。
「ちょ、ちょっと。何しに来たのさ。二人の話だったら家に帰ってからにしてよ~」
「すまん」
「ごめんね。蒼」
二人は恥ずかしそうにしている。
長年、離れていたから。
やっと夫婦の生活を取り戻したのだろう。
新婚みたいなところが笑ってしまう。
「ところで、関口くんは?」
栄一郎は心配そうに蒼を見る。
「え?」
「だって。蒼が大変なときなのに、ここにいないってことは……」
「違うって」
喧嘩でもしたのかと思われたのかも知れない。
「関口は今、ドイツに行っているんだって。コンクールに出ているの」
「そうか!」
「すごいわね」
「うん。本当に。すごい奴なんだよね……」
半分、消えそうな声でそう呟くと、病室の扉が開いた。
「あ、熊谷さん。検査の結果のお話をしますね」
「はい」
蒼はゆっくり身体を起こす。
さっきまでは動けなかった身体も、今はだいぶいい。
やっぱり医師の言っていたように、腰が抜けただけだったのかも知れない。
ベッドから降りて両親に連れられて談話室に通された。
中では外来で診察をしてくれた男が写真をみながら座っていた。
「先生。お世話になります」
栄一郎は頭を下げて部屋に入り、一瞬動きを止めた。
「あれ?」
二人は顔を見合わせて、それから笑顔になる。
「加賀!お前、どうしたんだよ?」
「あれ?もしかして。熊谷って。やっぱり、そうだと思いました。おれ」
後ろにいた空と蒼は瞳を瞬かせるばかり。
「そっか、そっか。今はここにいたんだ」
「ええ。って言うか、なんだか老けましたね。先生」
「それはそうだ。おれだって、こんな大きな子がいるくらいだからね」
栄一郎は蒼を見る。
「蒼、覚えている?家の病院に何度か手伝いに来てくれた加賀先生だよ」
加賀。
加賀?
蒼は一瞬どっきりした。
あの時の。
加賀。
彼もなんだかバツが悪そうにしている。
そっか。
だから、さっき、意味深な感じだったんだ。
蒼はちっとも気付かなかった。
そう言われてみるとそうだけど、まさか加賀がここにいるなんて思いも寄らなかったから……。
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