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49.熊谷家1
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実家で生活を送るのは何年ぶりだろうか?
高校卒業以来だから、10年くらいかな?
身の回りのものを抱えて家の前に立つ。
翌日。
退院したその足で、アパートに寄ってもらい生活に必要なものだけを持ってやってきたのだ。
もう元気だからいいって蒼は断ったが、栄一郎は頑として実家のほうがいいと言い張った。
いつもは好きにしなさい主義なのに。
心配してくれているのだろう。
こういう時は素直に従ったほうがいい。
関口が帰って来るまでとは言わず、数日でもここで生活すれば彼も納得してくれるだろう。
もうあっちの生活が長くなってきているので、自分的には馴染んだアパートのほうが落ち着くのだ。
「蒼の部屋はそのままだし。そこを使うといいわ」
母親は嬉しそうだ。
そう言えば、彼女が退院してから一つ屋根の下で生活するのは始めてだ。
たまにはいいのかも知れない。
蒼は返事をして自宅に入る。
中からは啓介が顔を出した。
「蒼、お前、大丈夫なの?」
「平気みたい」
「車とぶつかるなんて蒼らしいっつーか。今までなかったのが奇跡に近いよな」
厭味っぽい内容の言葉だけど、彼にとったら精一杯心配してくれている言葉なのだ。
蒼は苦笑する。
「本当だ。おれ、今まで交通事故に遭ったことないのって、奇跡かもね」
「蒼、荷物を置いてきなさい」
栄一郎に声をかけられて頷く。
すると、啓介が荷物を持ってくれた。
「いいよ」
「いいって。病人のクセに」
「病気じゃないもん」
「いいから、チビなんだからいいんだよ。こういうのは」
「む~!バカにしてっ!」
ぶうぶう喧嘩をしていると、横から手が伸びてきて荷物を取り上げられた。
「二人とも。仲良くね」
にっこり笑う栄一郎は、さっさと蒼の荷物を持って2階に上がって行った。
「あ、」
「父さんって」
慌てて追いかける二人。
その様子をみていた空は笑っていた。
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