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49.熊谷家2
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「陽介は学会で明日までいないんだ」
昼食時、栄一郎から出た言葉。
蒼からしたらほっとしたような、なんとも言えない気持ちである。
先日の加賀の話。
気になることはたくさんある。
ただ、それを追求したところでどうなるって分けでもないことは分かっている。
だけど、陽介にどんな顔をして会ったらいいのか分からないって言うところが本音だ。
蒼の休みも明日までだし。
また来週からは仕事だから。
「おれも今日は午後から遊びに行くぞ!」
啓介は偉そうにそう言い放つ。
「え?いいよ」
「なんだよ。頼まれれば付き合ってやろうかと思ってたのに……」
あ。
そういうことか。
蒼は苦笑する。
「だって、約束あるんでしょう?」
「でも、断ったって平気だ」
「そっか。啓介とも、もう遊びにいってないもんね」
「そういうことっ」
素直に遊んでくれるって言えばいいのに。
ひねくれているんだから……。
蒼は苦笑した。
「でも、大丈夫なの?お友達……」
「いっつも大学で会う奴らだから平気だって」
「そっか」
蒼は少し考えてから頷く。
「じゃあさ。行きたいところあるんだけど」
「いいけど?」
「本当!?」
蒼は嬉しそうに手を叩く。
行きたいところ。
蒼の行きたいところ。
それは……。
「げえ!!なに、蒼……」
蒼に案内されてやってきたところは案の定。
本屋さん。
「蒼、本気で言っているのか?」
「何が?おれ、本屋にず~っと来たかったの!だけど、残業続きで、もう店は閉まっちゃっていたし。関口は絶対に連れて来てくれないんだもん」
啓介はがっくし落ち込む。
遊びに行くって言ったら、ちょっとしたレジャーを思い浮かべるが……。
本屋ときたか!
蒼は瞳を輝かせている。
「わ~!これ、新刊出てたんだ!わわ!これ、続編じゃん!すげ~!」
もう自分の世界である。
啓介はがっくりしながらも蒼の後ろをついて歩いた。
結局、散策すること1時間。
蒼の買い物は計2万円に及んだ。
こんなに出費が激しいのでは、関口が嫌がるのも分かる気がした。
「蒼……こんなに買って、本当に読むのか?」
呆れて荷物持ちになっている啓介。
蒼は大きく頷く。
「ここのところ、ゆっくり本も読めなかったりしたし。読む!明日も一日読む!」
「本当に蒼は本が好きだな」
車に乗ってからちらっと蒼を見る。
彼は元気そうだ。
事故なんて聞いたから、本当にビックリしたけど。
元気ならいい。
「啓介、ありがとうね。来て良かった」
もう帰るつもりらしい。
きっと買った本をすぐにでも読む気でいるんだろうな……そう思う。
しかし、啓介もひるまない。
「あのさ。せっかく久しぶりに出てきたんだからさ。お茶くらいしてこうぜ!」
「え?いいけど」
案外簡単に同意をした蒼。
啓介は近くの喫茶店に車を入れた。
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