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50.ATTO SECOND2
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夕暮れが近いせいか、ひんやりした空気が頬を刺した。
行く宛てもなく、ただ心の赴くままに歩いてみる。
雪が積もっていて、一面真っ白。
冬。
関口がここに来て感じたイメージはその暗さだ。
雪国。
根雪期間はどれくらいなのだろうか?
かなり長いだろう。
道路の脇で遊んでいる子どもたちが雪玉のぶつけ合いをして笑っている。
雪がたくさんあって、空もどんよりしていて、暗いイメージの町なのだが、こうして子どもたちは明るい。
関口は思わず足を止め、彼らを見つめる。
すると、子どもの一人が気づいて駆け寄ってきた。
『こんばんは』
『こんばんは』
ほっぺを赤くしてにこにこしている少年。
それを見つけて、他の子どもたちも駆け寄ってくる。
『お兄さん、どこの人?』
『ねえねえ』
いきなり4人に囲まれて焦る。
『おれは日本ってとこから来た。今はあの家にいるんだ』
彼がミハエルの家を指差すと、子どもの一人が大笑いする。
『お化け屋敷!』
『へ?』
『だって~。あの家、雪につぶされちゃいそうだもん!』
子どもたちは顔を見合わせて愉快そうにしている。
『でもミハエル兄ちゃんはいい人なんだよ!お化けのお友達なんだって!』
一体、なんの話だ。
ちんぷんかんぷんで笑ってしまった。
『ねえ。キミたちは雪が好き?』
腰を下ろして視線を合わせる。
一同は間を入れずに首を縦に振った。
『好き!』
『寒いのに?』
『寒くないよ!動いてれば暖かいもん!』
確かに。
子どもたちは微妙に汗をかいていた。
駆け回っていたせいだろう。
『冬と春はどっちが好き?』
その問いには少しまごつく。
えっと~っと考えている子どもの中の一人、最初に駆け寄ってきた子が声を上げた。
『春!』
『どうして?』
『だってお花も咲くし、ぽかぽか明るいんだよ~!』
他の子たちも同意した。
『そうそう!ボクも春が好き!』
『雪も好きだけど、早く春にならないかな~!』
早く春にならないかな?
待ち遠しい?
『あなたたち~!もうお家に入りなさい!!』
向こうから女性の声が響く。
『は~い!じゃあね!お兄ちゃん!!』
子どもたちは口々に挨拶をしてかけていく。
風の子みたいだなと関口は思った。
賑やかな子どもたちがいなくなると、その場所はしんと静まり返っていった。
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