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50.ATTO SECOND10
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自信がないわけじゃない。
自分は自分なりに精一杯やったと思う。
だけど、何度経験しても、この結果発表だけは緊張した。
祈るような気持ちで蒼の写真を握り、結果を見つめる。
あった。
自分の番号。
ここまでくると奇跡に近いなと思う。
まさか、自分がこんなに勝ち残れるとは思っても見なかったことだ。
せいぜい、一次突破がいいところかもしれない。
そんな思いもどこかにあった。
無論、桜の前でそんなことを言ったら、殴られそうだから言わなかっただけだけど。
ほっとしてため息を吐く。
次は室内楽。
ふと佐伯たちの顔を思い出した。
「あいつら、何してんのかな~」
懐かしい。
くしゃくしゃになりつつある蒼の写真を眺めて、なんだか寂しくなった。
蒼に会いたい。
心からそう思う。
蒼。
何しているのだろう?
圭一郎が日本に行くって。
大丈夫だろうか?
振り回されてないかな?
それに喘息だって大丈夫かな?
寒いし。
ちゃんと見張ってないとすぐに薬を忘れるんだから。
星野には頼んできたけど、いろいろ心配なことは多い。
「星野さんも当てにならないからな~」
そうそう。
星野はあの高校生の恋人のことで頭がいっぱいなんだっけ。
蒼どころじゃないかもしれないな。
「は~」
ぶつぶつ独り言が多くなったのは思ったことをすぐに口にできない状況なのからなのか?
やっぱり日本語で話をしたい。
がっくりうなだれてから方向を変えると、呼び止められた。
相手はピゼッティ。
『チャオ!関口。君も無事、通過したみたいだね』
『ピゼッティ』
『どうしたの?そんな浮かない顔しちゃって。せっかく通過したのに。嬉しくないの?』
『そんなことは……』
思わず蒼の写真を握る手に力を入れる。
その様子を見て、彼は苦笑した。
『はは~ん。もしかして。ホームシック??』
『ち、ちが!』
指摘されると痛い。
関口は焦って否定する。
『まあまあ。みんなそういうもんだろう?おれだって家には帰りたいさ~。な?ブルー?』
ピゼッティは豪快に笑って、後ろにいた小柄な男に声をかけた。
彼は確か。
ピゼッティの伴奏者だ。
『あのねえ。そういう表現の仕方だと、ホームシック状態に陥っているようには見えないんですけど』
的確な突っ込みだ。
付き合いは長いのかも知れない。
関口は挨拶をする。
『はじめまして。ですよね?』
ブルーノはむっとしてピゼッティを見ていたが、はっとして手を差し出した。
『はじめまして。レオーネの伴奏をしていましたブルーノです』
『はじめまして。日本から来た関口です』
『関口?』
ふとブルーノが瞳を瞬かせる。
『関口って。どこかで聞いたことあると思ったけど。あのマエストロの?』
『い!いや!あれは関係ないんだ!そ、そうそう。日本では関口って苗字が80%を占めていて……』
『へ~!日本人ってほとんど関口って言うのか!』
ピゼッティは愉快そうに笑う。
『そ、そうなんだって』
『それは初耳です!すごいんですね~!』
ブルーノも感心している。
しかし……。
3人の元にあの記者-セコネフ―が走ってきた。
『いたぞ!』
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