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50.ATTO SECOND 11
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「へ?」
彼は関口にマイクを向ける。
『関口!お話を聞かせてください!君のこと。お父さんのことについて!』
ばれた。
顔が引きつる。
『わが社のスクープだ!君があの、マエストロの息子だなんて!』
記者は興奮している様子で一生懸命写真を撮る。
『勘弁してくれ!』
本音だ。
隣で見ていたピゼッティたちも苦笑する。
『おい!助けろ!』
『おれたちをだました罰だ。なあ?ブルー』
『そうだよ。やっぱり、あの関口の息子だったんじゃない』
いたずらな笑みのブルーノ。
『関口!お父さんは今回のコンクール参加について、どう思われているんですか?なにか、アドバイスとかをもらっていますか?』
大騒ぎだ。
一人で騒いでいるセコネフ。
それを見つけて、他の記者たちも寄ってくる。
『なんだ?』
『なにごとだ?』
やばい。
このままじゃ……。
そう思った瞬間。
手を引かれた。
「!?」
『仕方ないな!』
ちっと舌打ちをして手を引いてくれたのはピゼッティ。
彼は右手で関口を。
左手でブルーノを捉えて一目散に駆け出した。
「わわわわ~!」
猛烈な逃げに関口は悲鳴を上げる。
関口だって小柄ではないんだけど。
こうも軽々と他人に引っ張られたことはない。
『逃げたぞ!』
『追え~!』
後ろからの追撃を難なくかわし、3人は川辺に出た。
雪もずいぶん解けているせいか、逃げやすかった。
『まいたか?』
大の男2人を抱えて走ってきたくせに、全然息が上がっていない彼。
ちょっぴり尊敬だ。
『すごいな。お前』
『スタミナだけはあるからな。じゃないと、こんな長丁場のコンクールは乗り切れないって』
『ただの体力馬鹿ですから』
ブルーノの突っ込みに彼は笑う。
『そういうなよ。こういうときに役立ったじゃないか』
確かに。
助かった。
もうバレたんだからどうでもいいことなのだけど。
ああいう場所で圭一郎のことを聞かれるのが一番辛いのだ。
『すまん。助かった。ありがとう』
関口は側のベンチに座る。
『しかし。本当にお前って話題の多い男だな。本当に無名なのか?本当は超有名人なんじゃないのか?』
ピゼッティも苦笑している。
『知るか!本当におれはただのど素人だ。父親がどうとか、本当に関係ないんだって。ショルのことだって、あれはただの偶然で』
『ふうん』
『信じてないだろう?』
ニヤニヤしている二人を見てため息だ。
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