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51.a secret1
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連休明け。
本当だったら、下っ端蒼が一番に出勤してみんなを迎え入れる準備をしなければならないのだが、今日はみんなが待っていてくれた。
「お!蒼が来たぞ~!」
「蒼だ」
顔を出すと、みんな嬉しそうにしていた。
「すみませんでした。ご心配をおかけしました」
蒼は頭を下げる。
たった一泊の入院だったけど、星野も様子を見に来てくれたし、水野谷からはお見舞いまで頂いていたのだ。
蒼はペコペコ頭を下げながら、快気祝いを渡す。
「気使わなくていいのに」
「そうそう。気持ちなんだから」
そう言われても。
こちらだって軽い事故だったんだし、お見舞いをもらうほどもものではなかったのだ。
蒼の方が恐縮してしまう。
「ともかく。蒼が無事で何より」
水野谷は笑顔だ。
「しかし、事故って後々になってから後遺症が出たりするんだろう?気をつけないとだな」
星野はジロジロと蒼のことを見渡した。
外傷がないかどうか見極めているらしい。
「ええ。先生にもそう言われました」
「そっか~。無理はするなよ」
氏家にも肩を叩かれる。
「さ、蒼の元気な姿も見られたことだし。朝礼をするぞ」
水野谷の声に一同は事務室に並んぶ。
いつもと変りのない日常の始まり。
事務室の中にはコーヒーのにおいが漂っていて爽やかな一日の始まりを予感させている。
だけど、今日はちょっぴり違った。
朝礼の時間なのに、来客があったのだ。
「おはようございます」
よく響く低音。
蒼は首を傾げて男を見た。
長身で格好はきちっとしている。
外見だけで神経質そうな性格が見て取れた。
すっきりしたデザインの眼鏡も彼を知的に見せている。
「お、おはようございます。あの?」
蒼は男を見上げる。
彼は蒼に一瞥をくれてから声を上げた。
「おはようございます。みなさん」
朝礼を始めようとしていた水野谷は男を見て笑顔になった。
「安齋?どうしたんだ?」
彼の言葉に星野も表情を明るくする。
「あれ!?どうしたんだ?お前??」
蒼は職員と男を交互に見る。
尾形は少し、表情が引きつっている。
氏家と高田は笑顔を見せた。
吉田は……。
顔が真っ青だった。
彼らしくない。
誰?
この人。
蒼だけが分からない状況。
星野は嬉しそうに手を振って男のところにやってきた。
「元気そうじゃないか。安齋」
「ここは相変わらず変りませんね。みんなの仕事をしたくないオーラが滲み出ている」
安齋の言葉に蒼はむっとした。
だけど、水野谷は苦笑した。
「相変わらず厳しいな、お前は。本庁に戻って磨きがかかったんじゃないのか?」
本庁。
そういえば。
蒼がここに入れた理由の一つ。
前任の人が本庁に異動になったこと。
その異動になった人が安齋と言う名前だったことを思い出す。
この人が、蒼が来る前までそこに座って仕事をしていた人。
「そんなことはないです。おれは元々こういう性格ですから」
「ちぇ。なんだよ~。本庁に行ったからって冷たいね~」
星野の茶化しに高田と氏家は爆笑だ。
だけど、尾形はいい思い出がないのかも知れない。
確か、彼の教育係がこの男だ。
直接関わる機会も多かったのだろう。
引きつった笑みを浮かべている。
今の星音堂事務にはこういうタイプの人がいない。
そのせいでのんびり仕事ができているんだけど。
人で雰囲気が変るってあるのだな……。
そう実感した。
この人がここに勤務していたら、昨日までのまったり雰囲気はいっぺんしてしまうのだろう。
実感した。
「今日は遊びに来たのではありません。ご挨拶に来ました」
星野のからかいなんて半分無視をして安齋は続ける。
「挨拶?」
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