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「そろそろ、次年度から市制100周年記念事業が動き出します。それでご挨拶に。この星音堂もアニバーサリー企画に協力してもらうことになりますからね。今後、ちょくちょくこうして打ち合わせに来るかと思います」
「そうか。もう前夜祭イヤーだもんな」
水野谷の言葉に、一同は納得顔だ。
すごいな、と蒼は思った。
市制100周年の記念事業を回すなんて、すごい大役だ。
こんな若いのに。
よっぽど優れている人なのだろう。
だから星音堂からも異動になったんだろうけど。
「そっか~。お前も頑張っているんだな。よし!星音堂代表として、この星野からもお願いをしておきます!」
「なんで星野さんが代表なんですか」
隣で聞いていた蒼は、ついいつもの調子で突っ込みを入れてしまう。
水野谷も苦笑だ。
そんな二人の様子になんて興味がなさそうに、安齋は蒼のことを見た。
初対面だ、と今気付いたらしい。
初めて視線が合う。
「……?」
「ああ、安齋は蒼のこと知らないもんね。こいつ、お前の後に入ってきた下っ端だ。吉田も下っ端を脱出したんだぞ~。な~!吉田」
星野は吉田を見る。
しかし、いつの間にか彼はいなくなっていた。
「あれ?吉田?」
「トイレに行きましたよ」
尾形が答える。
「ちぇ~!せっかく安齋が来ているのにな」
ぶうぶうふくれている星野を見て、蒼はトイレの方向を見た。
さっきの吉田は血の気がなかった。
具合でも悪いんじゃないだろうか?
心配だ。
「お前。名前は?」
吉田のことに思いを馳せていると、安齋に肩を掴まれる。
「は!すみません。おれ、熊谷蒼です」
「熊谷」
「はい」
「蒼でいいんだって!蒼で」
な~っと星野に同意を求められても困る。
蒼も顔が引きつった。
なんだか恐いもの。
この人。
星野はよく平気でいられるものだ。
「蒼……珍しい名前だ」
「え!は、はい?」
なに?
なになに?
蒼はおろおろした。
こんな恐い人でも自分の名前が珍しいと思うのだろうか?
「いや」
安齋はなにかを言いかけてやめた。
蒼には分からないことばっかり。
「今日はご挨拶だけだったので、これで失礼しますが。今後とも宜しくお願いします」
彼はそれだけ言うとさっさと事務室を出て行ってしまった。
蒼はぽかんと見送る。
氏家たちはわいわい騒がしくなった。
「相変わらずだな。安齋は」
「本当だ。昔から素っ気ない奴だったけど」
「おれ、すげ~ビックリしましたよ!殴りこみされたのかと思った」
尾形は冷や汗を拭っていた。
「蒼もビックリしただろう?星音堂にはいないタイプだからな」
星野は笑っている。
「すごく、てきぱきして仕事ができそうな人ですね」
「でも恐い?」
「え!なんで分かったんですか?」
「それはそうだろう?あいつ、第一印象は最悪だからな」
なんだ。
星野もそう思っているのか。
「だけど、本当は結構いい奴なんだぞ?人のこと心配してくれたり。後輩は大切にするしな」
「え!おれは大切にされたことないですからね!」
遠くで尾形がぶうぶう文句を言っている。
「そう言うなって。本当にそうなんだから」
まあ、人を見る目のある星野がそう言うのだからそうなのだろうけど。
蒼はきょろょきょろする。
吉田は?
大丈夫だろうか?
トイレに行ったのか?
蒼はそっと事務室を抜け出してトイレに向かった。
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