アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
51.a secret6
-
「おれはお前が思うほどすごい人間なんかじゃないんだよ。まだまだ一人前に仕事もできないし。蒼に協力してもらっているから出来ることであって、おれ一人ではなにもできないんだ」
「そんなこと」
「ううん。おれ、仕事とか覚えるの遅いし。本当に迷惑ばっかりだった。蒼はすごいよ。おれの新人のときなんてミスばっかで、尾形さんに迷惑かけ通しだったんだから」
少し照れたような表情を見せる吉田。
「蒼にそう思ってもらっていて嬉しかったよ。どうもね」
「話を終わらせないでくださいよ」
都合が悪いとこうなのだから。
蒼はぶ~っと頬を膨らませた。
「分かっているって!蒼の言いたいことは!」
両手を挙げて彼は笑った。
「いいんだって!蒼。心配はなし!おれはおれ。いろいろ事情もあるんだって。この前も言っただろう?確かに安齋さんは口が悪くて、おれも恐いなって思っている。でも、あれはあれなんだって。あの人はいつもああなの。うん」
「いつも?」
「そうそう、いっつも!」
彼はにっこり笑う。
「いっつも怒られてばっかり。ドジしてね、人に騙されたりすることも多くて。だけど、あの人が助けてくれるんだ。甘えているわけではないんだけど、どうも助けてもらう機会が多くて。『だから一人前にならないんだ』って怒られてばっかりなんだけどね」
嬉しそうに笑う吉田。
「吉田さんは本当に安齋さんが好きなんですね」
ふとそう感じた。
蒼の言葉に吉田は更に笑ってみせる。
「本当に恋人なのか?本当に好きなのか?それはよく分からないんだけど、ただ一つ言えることはあの人もおれのことを大切にしてくれていて、おれもそうしたいなって思うってこと」
蒼には分からない。
本当にあれが大切にしている態度なのだろうか?
「おれにはなんとも理解できないと言うか」
戸惑ったようにしていると、吉田は「それはそうだ」と笑う。
「お前たちは単純明快だもんな」
「え?」
「蒼と関口を見ていると時々羨ましいなって思うよ。おれもああいう関係になれたらいいなって思っているけど……。でもあの人が相手じゃ、そうは行かないしねえ」
「吉田さん……」
彼はまっすぐに蒼を見つめる。
「おれなりになんとかしてみる。答えを出さなくちゃいけない時期なんだと思うから」
「……」
「ありがとうな。お前が後押ししてくれたんだから。ちゃんとする」
「おれはなにも……」
ううんと首を横に振って、彼は時計を見た。
「わ!もうこんな時間だ。おれ、戸締りに行ってくるから」
「え、はい」
ふんふん機嫌よさそうに廊下に出て行く彼を見送って蒼はため息を吐いた。
大丈夫だろうか?
あの二人は蒼が考えているよりも奥が深い。
なにがどうなっているのかなんて、ちっとも理解できなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
368 / 869