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51.a secret10
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「イタ!」
「なに呆けてるんだよ!」
そこには煙草をくわえた星野の姿。
「星野さん」
「寒いのに、なにしてんだかね。この子は」
星野は玄関に手をかける。
「こら!蒼。開いてねーじゃねーか!」
「は!しまった……」
「まったく。一番に来なくてもいいって言ったがな。来てるなら開けておけ」
「すみません。……だって、安齋さんが……」
蒼はもごもご言い訳をする。
「は?安齋がなんだって?」
「むむ……これはどうなんでしょうか。話したほうがいいのでしょうか?」
吉田が休みって。
安齋からの伝言。
伝えないわけにも行かないしなあ。
迷う。
だって安齋が伝言を持ってきたとなるとなんだか怪しいもの。
おろおろしている蒼だけど、再度、星野にどつかれる。
「はっきりしない奴だな?安齋がなんだって?」
「乱暴しないでくださいよ~!まだあちこち痛むんだから」
床に座り込んで訴えると、星野は「そうだった」と気を取り直した。
「お前、事故上がりなんだもんな」
「なんだか、そういう言い方って酷い」
「本当にわがままな奴だな。関口はよくお前と一緒にいられると思うぞ?」
「……だって~」
「だから!なんだっつーんだって!はっきりしない奴だな。伝言も受けられないのか?」
「……」
蒼はしょんぼりして呟く。
「よ、吉田さんがお休みになりますって」
決心して言ったのに。
星野は「あっそ」と軽く返答し、中に入っていってしまった。
あれ?
「あれ?星野さん?」
あっけない。
蒼は慌てて事務室に入る。
「なんだよ?」
「驚かないんですか?安齋さんが吉田さんのことを伝えに来て」
「別に」
「ええ?」
星野は知らないはずだ。
吉田はそう言っていたもの。
星野はかばんを置いて椅子に座る。
「付き合ってんだ。別段不思議はないだろう?お前だって知ってたんだろう?」
「そっか。星野さんも……」
「う~ん。うん。安齋からいろいろ聞いてて」
「ええ!?」
あの人が恋愛の相談をする?
想像できない。
蒼は思わず笑ってしまった。
「星野さんは、本当になんでも知ってるんですね」
「そういうお前こそ、かなりの情報通だろうが。どこで知ったんだ?」
「えっと。吉田さんと安齋さんが二人でいるところを見ちゃって。それで」
お湯の準備をしながら話を進める。
蒼の横顔を見て、星野は苦笑した。
どうせ、また人の揉め事に首を突っ込んで一人でてんてこ舞いになっていたのだろう。
星野は、話は聞いても口出しはしないようにしているから、あんまり巻き込まれることはないんだけど。
蒼の場合は自分が巻き込まれてしまうことが多いようだ。
「お前、家政婦は見た!の男バージョンだな。家政婦になっちまえ」
「はあ!?それはひどいですよ!」
「だってそうだろうが。こっそり影から覗き見してたんだろう?」
図星である。
蒼は言葉に詰まった。
「ぐ」
「本当にやったのか?お前~!?」
半分は冗談だったらしい。
星野は大爆笑だ。
「お前のあだな家政婦もとい、家政夫な!」
「にゅ~!それだけは勘弁してくださいよ!おれの趣味が覗きみたいじゃないですか!」
「本当だろうが」
「違います~~!」
今日は吉田もいないから、こうして一日星野にからかわれるのだろうな。
がっくりだ。
早く彼が出てきてくれないかな?そう思う。
蒼にとっては必要な人なのだ。
吉田は。
いろいろな意味で。
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