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52.ATTO TERZO3
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三次審査。
ファイナル進出者の選定。
これは毎年のことながら、揉めに揉める作業である。
審査委員は全部で8人。
それぞれが得意分野でのスペシャリストだ。
『私はこの1番の子がいいわ。演奏の技量も素晴らしいし。この最後のところなんか、本当にいいと思ったわ』
『そうかな?私は3番の子ね。なんて言ったって、前回よりも深みを感じたし。これからが楽しみだと思います。だから、この子をファイナルに』
『いやいや。おれは7番だな。彼の指さばきは段違いにいいと思う!是非、ショルとの共演を聴きたいものだ』
各々の意見を聞いて取りまとめる審査委員長のハルトマンは頭が痛い。
彼は眼鏡を押し、咳払いをする。
『ちょっと、みなさん!静粛に!これでは話にならない。分かった、分かった。投票をしてその結果について話し合うことにしましょう』
一同は彼の言葉に同意をした。
投票制。
8人の演奏にそれぞれの個人的主観で順位をつけ、それを総合してみると言うもの。
1時間後。
結果が出る。
あの子がいい、この子がいいと口々に言っていた審査委員たちだが、結果が出てみると満足だ。
『とくに変更はないんじゃないですか?』
『そうですね。このままでいけると思います』
『ふむ』
ハルトマンも結果を見つめて頷く。
『しかし。今まで誰もこの子を推してなかったのに。こういう結果になるなんてね』
『意外ですわね』
『誰も一次のときには予想もしませんでしたね』
『なにかと話題の多い子だったみたいだけどね。前情報がなかったからな』
『スキャンダルは抜きにして。不安定なんだけど、なかなか人の心に引っかかるものを作る子だからね。どうも気になって落とせないって言うのが本音かな?』
ハルトマンの言葉に他の審査委員たちも苦笑する。
『そうですね。3番の子のような華やかさもないですし、1番の子のような卓越した技巧があるわけではないですけど。なんだかしっとり心に入り込んできますね』
審査員たちは4番のところに赤丸をつけた。
『さて。ファイナル。楽しませてもらおうか』
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