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53.心に決める2
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これはお昼のワイドショー。
お昼の顔。
おじさんタレントがフリップを持って人物の経歴を語っているところだった。
『この人ね。素晴らしい経歴の持ち主なんですよ。父親はなんと!世界的に有名な指揮者。そして、母親はあの有名なプリマドンナですよ!今までどうして話題になんなかったんだろうね?これ。もう全世界が注目していますよ。この人に』
彼の持っているフリップには関口の写真が載っていた。
「あれま!これって関口じゃん」
「なんで、こんなテレビでやってんの?」
は~っと感嘆の声が洩れる。
テレビの上のほうには『日本人初 ゼスプリ音楽祭 ファイナル進出』と書かれている。
「あいつ、順調にやってんじゃん」
星野は苦笑いだ。
「しかし、取り上げられるほどのもんか?」
「ちょっとばかし、輝かしい生い立ちと、そんなに悪くないルックスのせいじゃないか?」
水野谷の言葉に一同はどっと沸く。
「確かに」
「今まで取り上げられてないほうがおかしいよな」
「そうそう。いまどき、2世は注目されるもんなんだから」
各々の感想が聞こえる。
だけど、蒼はぼんやりテレビを見つめていた。
本当に別の世界に行っちゃった人みたいに感じる。
『でも、かっこいいですよね?この人。これから大ブレイクじゃない?』
コメンテーターのおばちゃんはきゃっきゃしている。
『そうだねえ。ちょっと彼の様子を見てみましょうか?えっと、映像が極端に少ないので、2次審査の結果後に撮影されたVTRを見てみましょう』
どっきりする。
関口を見るのは久しぶりな気がした。
たくさんの報道陣に囲まれて迷惑そうにしている関口。
最初はおたおただったけど、仕舞いにはキレそうになっている。
このまま行ったら暴れないか心配になった。
しかし、見知らぬ外人が関口の手を引っ張って逃亡する。
関口はあっと言う間に画面から消えた。
「誰だ、あれ?」
「ボディガードじゃねえか?」
「すごいな。あいつ」
「それにして、あっちでも時の人かよ~」
「星音堂に遊びに来ている場合じゃないですね」
最後の吉田の言葉に胸が痛んだ。
そうだよね。
関口は。
こんなところに留まるべき人ではないのだ。
なんだか改めて人の口から聞くとショックだった。
顔色も一気に悪くなる。
そんな蒼の横顔を見て、星野は口を開こうとした。
しかし、それをさえぎる大きな声が事務室に響いた。
「そんなことはないぞ!あいつはここがあってこそ、音楽を続けていられるのだっ!ここに留まらずしてどうするっ!!」
職員は一斉に事務室の入り口を見る。
そこには嬉しそうに立っている圭一郎の姿が。
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