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53.心に決める5
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圭一郎の突然の訪問は驚きもあり、喜びもあった。
栄一郎は嬉しそうに彼を招きいれた。
「ここに来るのは久しぶりだな」
彼はソファに慣れた感じで座る。
そうか。
昔はこうして遊びに来ていたのだろう。
「お前も忙しいからな」
栄一郎は苦笑している。
本当に嬉しそうだった。
「ご飯、食べていくでしょう?」
空の言葉に圭一郎は嬉しそうに手を叩く。
「もちろん!光栄だ!空さんの手料理なんて……かおりにバレたらヤキモチものだ!空さんの手料理を独り占めだもんな!」
さすがに大人ばかりの熊谷家は、人がいても食卓なんかは静かなものだが。
今日はこの人の出現で一気に大騒ぎになっていた。
診察を終えてやってきた陽介もビックリしている。
「おお!キミが陽介くんか!大きくなったな~!」
あはははと笑いながらハグされても困る。
さすがの彼も固まっていた。
「本当に、日本人はシャイで困るよ」
彼は嬉しそうにしている。
本当に、この人。
なにをしに来たんだろうか?
蒼は空の手伝いをしに席を立つ。
その間に一郎コンビは昔の話に花を咲かせていた。
台所にいると、さすがの陽介も呆れた調子でやってきた。
「あれ、オヤジの友達か?」
「うん……と言うか。関口のお父さん」
「は!?」
陽介は目が点だ。
「何?じゃあ、オヤジとあいつの父親は知り合いだったってこと?」
「そうみたい。おれも知らなかったんだけどね。なんでも友達だったらしいよ」
「へえ」
「あの二人は本当に仲がいいのよね。遊んでいた期間はそんなに長くなかったみたいだけど」
空も苦笑している。
「さ、陽介も手伝って。これを運んでちょうだい」
サラダを押し付けられて、彼は渋々顔だ。
今まで一人暮らしもしたことがない陽介にとったら家事経験はゼロに等しい。
しかし、空がやってきてからは、ああだこうだと理由をつけて手伝わされているらしかった。
「これ、蒼は盛り付けをしてちょうだい」
「うん」
留守にしている啓介のこと、ぶうぶう文句を言いながらもサラダを運んでいく。
その様子を見てほっとした。
彼女はこの家を不在にしすぎた。
陽介や啓介と馴染むかどうかが一番心配だったけど、ちゃんとお母さんをやっているらしい。
陽介も空のことを疎む感じはない。
母親として認めてくれているのだろう。
こういうことってちょっと遊びに来ただけじゃ分からないことだから。
今回の長期滞在はいいことだったのかも知れない。
「よしっと。じゃ、これで終わりよ。さ、あっちに行って一緒に食べましょう」
空に背中を押されて蒼は頷いた。
「うん」
「蒼?」
「ん?」
空はふと蒼の顔を見て笑う。
「関口くんがいなくて寂しいんでしょう?」
「え?そ、それはそうじゃん。だって、いつも一緒だったから……」
「そっか」
何を急に。
蒼は瞬きをして空を見る。
彼女は微笑んでいただけだった。
「さ。行こうか」
「うん……?」
空に引っ張られて蒼は居間へと連れてこられた。
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