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54.ATTO QUARTO6
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いろいろありすぎて、ごちゃごちゃのまま本番はやってきた。
関口は重い頭を抱えながらホールに向かう。
結局、眠れなかった。
精神的に弱い部分の多い彼。
日本の時は蒼に支えられてなんとかいったけど、ここでは彼がいないから、この不安をどう解消したらいいのか分からないままに過ぎてしまったのだ。
「は~……」
「大丈夫?」
隣を歩いている桜は笑っている。
「頭が重い。ぐらぐらする~」
「もう。鍛えがいのない男だね。あたしは度胸をつけさせるために色々経験させたって言うのに」
「桜さん~」
何を言っても無駄だろう。
ぼんやりしちゃっている。
「あれ?ミハエルは?」
「遅れてくるって。ちょっと、用事あって」
「ふうん」
いつも側で聴いてくれていたのに。
なんだかいないと心細い。
ため息を吐いて歩くと、聞き慣れた言葉が聞こえた。
日本語だ。
「関口くん!すみません!関口くんですよね?」
相手は若い男。
スーツ姿でリュックを背おい、デジカメを持っていた。
おのぼりさんみたいな格好に桜は笑ってしまう。
「?」
「よかった!ホールに入る前に捕まえられて」
「?」
不可解な顔をしていたのだろう。
男は慌てて名刺を出す。
「すみません。私は音楽の時間社の高塚といいます!今日はファイナルまで残られた関口さんの取材をさせていただきたかったんですけど」
唐突だなあと思う。
もう、こちらの記者に追い回されているのであんまり気にならなくなった。
だけど、日本となれば別だ。
日本で紹介されるのは困る。
「いや。今日は本番だし」
「そうですよね。分かります。緊張しているときに本当に申し訳ないんですけど。だけど、関口くんのことはもう日本でも放送されてますし、なんとか。一言だけでも」
「へ?放送って?」
「え?聞いてないんですか?関口くん。日本人でファイナルに残るのは久しぶりなので、テレビでニュースになってましたよ?」
「えええええ!!!」
飛び上がるくらい驚いた。
そういうのって本当に困る!
おどおどしてしまう。
動揺が隠せないのだ。
「大丈夫か?関口」
桜は彼の様子を見て苦笑する。
固まってしまった彼に一生懸命話かけている高塚。
そのうち、地元のマスコミもやってくる。
もちろん、先頭はセコネフだ。
『関口!今日の気分はどう?因縁のショルとの共演、うまくできそう?』
いつの間にか、大勢のマスコミに囲まれて目が回りそうだ。
昨日の寝不足が祟っているのだろう。
くらくらした。
「気分、悪い」
吐きそう。
ぐっと口元を押さえてバランスが崩れる。
「大丈夫??」
側にいた高塚が支えてくれなかったら倒れていたかもしれない。
「へ、平気じゃない……」
『関口?顔色が悪いですよ?』
『今日の演奏は大丈夫なんですか?』
それでも食い下がってくる地元マスコミ。
高塚は彼らに視線を向ける。
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