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54.ATTO QUARTO9
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蒼はそろそろとやってきて関口の隣に座った。
「仕事は?」
「もう有給ないっていうのに。関口のお父さんさんが課長に話をしちゃって。無理無理休みもらってきた」
「そっか~。今年度は入院したりなんだりで結構、休んだもんな」
「そうそう。もうおれ、給料天引きだよ~。無遅刻無欠席の優等生だったのにさ」
「そっか?」
「そうなの!」
最初は緊張していた蒼だったけど、嬉しそうに笑う。
「よかった。笑った」
「え!……ごめん。愛想なかった?」
「そんなことない。ただ、ちょっと逢ってないのに、おれ緊張してさ」
関口は苦笑する。
よそよそしいなんて柄じゃないのに。
蒼もつられて笑う。
「本当だ。なに緊張してたんだろう。……なんだかテレビとかで関口のこと放送するたびに遠くに行っちゃった気がして嫌だったんだよね。でもよかった。やっぱり関口は関口だった」
へへ~と笑う蒼。
そっと手を回して腰を引き寄せる。
プンっと蒼の香がした。
「関口」
「本当に逢いたかった」
「迷惑、だったんじゃない?こんな本番前で……」
「そんなことない。危機一髪だ。間に合ってよかった」
「……大変だった?」
「ううん。大丈夫だ。大丈夫」
今までのごちゃごちゃなんて消えた。
大丈夫だ。
頭がすっきりした。
「ねえ、蒼」
「ん?」
「あのさ、あのさ」
にこにこして蒼を見る。
蒼は呆れた顔をした。
こういう子どもっぽい態度をとるときっておねだりのとき。
「あのねえ。本番前にいいのかよ?」
「いいの。この前のコンクールだって、蒼にキスしてもらって大丈夫だったんだから。いいじゃん」
「……関ぐ……」
蒼が言い終わる前に顔を近づけて唇を重ねる。
ソファに押し付けられる格好になった蒼。
もがもがしていたけど、すぐにおとなしくなった。
関口に逢いたかった。
それは蒼も同じ気持ち。
こうして目の前に彼がいることで蒼もまた落ち着きをもらっていたのだ。
「ふッ……」
深いキスに瞳を閉じる。
関口の味。
蒼の味。
久しぶりのキス。
もつれるように舌を絡ませ吸う。
「……ッ」
蒼の感覚に気分がいい。
眼鏡をはずし、さて本格的にキスに戻ろうとしたそのとき。
再び扉が開く。
「は!」
「っ!?」
「はいはい。お預けだよ!本番なんだから」
そこに立っていたのは桜。
「え?もうですか?」
「もうですかじゃないでしょう?今、30分の休憩が入ってるからそろそろ準備しな」
「ちぇ」
「ちぇじゃない!終わったら好きなだけ蒼とイチャイチャさせてあげるから」
そういう言い方は困る。
ぶ~っとふくれている関口は蒼の上から身体をどかし、眼鏡をかけなおした。
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