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55.Finale3
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ホワイエを横切って外に出ようとした蒼。
『蒼』
後ろから声がかかる。
相手はショルティ。
ステージから降りてきたところらしかった。
『一人でどこに行くの?』
『え?ちょ、ちょっと』
『ふうん。おれも行こうかな?』
『だ、だって、ショルは演奏が』
『次は午後からなんだ~』
『ぐ……』
二人でいるところを関口にでも見られたら大変だ。
なのに、ショルティは全然気にしていないようだ。
さっさと蒼の腕を掴んで歩き出す。
『ランチでもしよう!』
『えっと、ショル??』
『大丈夫!とって食べたりはしないって。この前みたいにちょっとだけキスさせてくれるって言うなら大歓迎だけど?』
『き、キス!!??』
顔を赤くする蒼。
『キスだなんて。おれ、知らないんだけど』
『そうそう。蒼、寝ていたもん』
『ああ~……関口にばれたら……』
『もうばれているよ?』
『ひいい!』
ぐるぐる目を白黒させている蒼をつれ、ショルティはずんずん歩いていった。
楽器を片付けて、ほっとしていると、圭一郎たちがやってきた。
「圭~、よかたわよ!お母さん、感激しちゃった♪」
「そうそう。いい演奏だった」
世界的に有名な音楽家に誉められるのは、ちょっとばっかり嬉しいことだけど。
この両親だ。
なんだか複雑な思いである。
「蒼は?」
リボンを取り、ふと顔を上げる。
そこには圭一郎、かおり、ミハエル、桜、高塚しかいない。
「なんだかちょっと出て行きました」
高塚の言葉に関口は険しい顔をした。
「どこいったんだ。あいつ。迷子になりそうなんだけど」
「蒼ちゃんだって立派な大人よ。大丈夫だって」
「母さん」
「ささ、ご飯でも食べましょう。携帯に連絡いれておけばいいし。先に行っていても問題ないでしょう」
かおりに背中を押されて、関口は控え室を後にした。
「蒼……」
ステージを終えたら、一番に逢いたい人だったのに。
なんだかがっかりしてため息が出た。
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