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55.Finale4
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一方。
ショルティに連行されていった蒼はランチをご馳走になっていた。
さっきから蒼の携帯にはいくつもの連絡が入っているのだが。
『うるさいね。邪魔するのはこっちにおこう』
なんてショルティに取り上げられてしまっていた。
今頃、みんな心配してくれているに違いない。
関口に、どれだけ素敵だったか伝えたかったのに。
ちょっとがっかりした。
『おいしいね』
にっこり見られても困る。
蒼は引きつった笑みを浮かべて頷いた。
『蒼とこうして食事をするのは半年振りだね』
『そ、そうだね』
そうそう。
このコンクール騒動が勃発した元になった出来事だ。
『圭の演奏はどうだった?』
『え!えっと。すごく良かった。ショルとも息もぴったりだったし』
『でしょ?でしょう?おれが合わせるんだ。感謝してもらわないとね!』
本当に嬉しそうだなあっと思う。
この人は元々こういうタイプなのだろうか?
それとも……。
『ところで。蒼はどうしてそんなに浮かない顔をしているの?』
どっきりした。
よく見ている人だと思う。
能天気そうにしているけど、さすがだ。
『べ、別に。浮かないだなんて』
『ふふん~。さしずめ、圭が遠くに行ってしまった~!なんて思っているんじゃないの?』
ショルティの声は通る。
レストランのほかの客たちがちらちらこちらを見ていた。
『し~!もう少し小さな声にしてもらえませんか?』
『そう?』
もう!
演奏家って言うのはみんなこうなのか?
圭一郎も声がでかい。
一緒に外食なんて出来ないって思っていたが。
ショルティも同類かもしれない。
『……。関口が飛び立っていくのはいいことだと思うけど。だけど、置いてきぼりになったみたいだし。なんだかおれとは全く違う世界に住んでいる人なんだなって実感しちゃって』
目の前のスープを見つめてしょんぼりだ。
こんなこと。
この有名人のショルティに言っても仕方がないことだと思うけど。
そう思った。
しかし、ショルティはにこにこして蒼を見ていた。
『蒼は本当に可愛いね』
『あの!今はその話じゃなくて』
『ううん。蒼は本当に可愛いと思うよ。素直だし。そういう気持ちって人に話したくない感情じゃない。自分が惨めになるから』
頬杖をついて続ける。
『おれも一緒なんだ~』
『え?一緒って?だってショルは有名で』
『そんなことないよ』
ショルティは顔をしかめる。
『おれも置いてきぼりの一員だって』
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