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55.Finale9
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翌日は、ファイナルに勝ち残った4人のガラコンサートが開催されて、地元住民たちも至福の時を過ごした。
365日、忙しい圭一郎とかおりはさっさと仕事に戻り、残された関口たちは帰国の途に就いた。
『いやあ。本当にいい勉強になったよ。圭って言う面白い男にも逢えたしな』
空港で別れの挨拶をするピゼッティ。
『面白いってどういう意味だよ?』
『まあ、そう怒ることないじゃん。案外、怒りっぽいんだな。日本人は』
『あのねえ。おれはおれ。日本人って言葉でくくるな』
むっとして彼を見てやるが、別段悪気はないらしい。
『まあまあ。そういうところが怒りっぽいって言うんだよ。圭、突っ張ってばっかじゃ嫌われるんじゃない?』
こそっと耳打ちをして向けた視線。
蒼だ。
彼は疲れてしまったんだろう。
ぼんやりとして空港の窓から見えている青い空を眺めていた。
関口とショルティの争いの元になった噂の蒼だ。
ピゼッティたちも放っておくはずはない。
昨日はガラコンサートの打ち上げのときに散々いじられた蒼。
打ち上げは朝方にまで及んで、それは大変な騒ぎだった。
普通の人間なら蒼みたいな反応をするんだろうけど。
ピゼッティたちはタフだ。
今朝も早くから元気に動き回っている。
こういう人だからこそ、世界をまたに駆けて音楽活動が出来るのかもしれない。
そう思った。
『あのねえ。そういうお前こそ。ちゃんと見ていて上げないと嫌われるからな』
勝手なことばっかり言っている彼に呆れて、関口はブルーノを見る。
『おれは大丈夫だ。あいつに限っておれを嫌うなんてことはありえない』
ふんっと偉そうに言い切られても困る。
『そんなこと言っちゃって。いつどうなるか分からないのが人間の心ってもんだろう?ちゃんと大切にしてあげないと思いは伝わらないんだから』
それは自分の経験から学んだこと。
「関口くん。時間ですよ」
チケットを持って嬉しそうに走ってきた高塚。
その後ろには桜が立っていた。
結局、高塚も一緒に帰国することになった。
変な因縁だが、仕方ないか。
『じゃあな。レオーネ』
『おう。またどっかで』
『うん』
挨拶を交し、関口は蒼の腕を掴む。
「蒼、家に帰ろう」
「……」
ぼんやり関口を見上げてから、蒼は瞳の色を濃くする。
「うん!」
嬉しそうに笑う蒼。
関口も嬉しい。
日本に帰る。
蒼と一緒に。
最初に来たときは薄暗かった空は今では青空。
寒い国にも春の訪れが感じられる。
自分にも。
春。
来るかな?
蒼に手を引かれて関口は清清しい気持ちになった。
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