アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
56.迷子の子6
-
「あの。ともかくですね。今のところ依頼のある仕事を整理したいんですけど」
「うん?」
「一応、おれの把握している仕事を持ってきてみました」
彼は抱えていたかばんから書類を取り出す。
結構な量だ。
「こんなにあるの?」
蒼はビックリだ。
「こんなもんじゃないですよ。今まで連絡先はここになっていたんですから、おれの方で把握しきれない仕事がまだまだあると思います。まずはそれを整理していかないと。明日から連絡先はおれの携帯にしますから」
「いいんですか?じゃんじゃん掛かってきますよ?」
蒼は今朝の様子を思い出して苦笑する。
「平気です。仕事用の携帯ですから。それに連絡口を一本にしたほうが把握しやすいですからね」
おろおろしていたかと思いきや。
こういう仕事は向いているのかもしれない。
なんだかさっきとは別人みたいに真剣だ。
書類を見ても、きっちり分類してあって見やすい。
圭は片っ端から書類を見る。
「これ、どうするかな」
「とりあえず、圭くんの中での優先度を決めてください。全部見てもらって、やるかやらないかをはじめに分けてもらって」
「そっか」
圭はさっさと書類に目を通して「やる」「やらない」と呟きながら分別をしていく。
蒼は退屈だ。
圭や高塚のコーヒーを入れたり、最初の内はせっせと手伝いをしていたけど、結局飽きた。
自分は着替えをして外に出る。
二人は真剣にスケジュールの打ち合わせをしていたから、別にいいだろう。
外に出ると、快晴のいい日だった。
まだ春とは言え肌寒い。
もう来週からは新しい年度になるし。
「誕生日かあ……。もう年はいらないよな」
一人で言っても仕方のない愚痴を言いながら、蒼は歩く。
雪も溶けていい感じだ。
このままいけば何事もなく春になるんだろうけど。
そうはいかないのがこの辺りだ。
春を目前にして降るどか雪。
これが大変なのだ。
いつも蒼の誕生日の辺りに降る。
春が近いので水気の多い雪はずっしり重く、雪かきをするのに苦労する。
また、夜間の冷気にさらされてガチガチに凍ったりして危ないのだ。
だからたちが悪い。
地元の人でも嫌な雪としかいいようがないのだ。
これからどうしようかな?
圭と高塚の話は延々と続きそうだし。
蒼は仕方がないので公園に足を向けた。
こういう休日もいいのかも知れない。
そう思いながら。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
411 / 869