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56.迷子の子8
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圭の車に乗って蒼探索の旅は始まる。
月曜日だし。
星音堂は休みなので削除だ。
結構、非番でも職場に遊びに行ったりするタイプだから、週末なら可能性は高い。
次に寄ったところは桜のところ。
月曜日だって、ここだけは活気付いている。
18時を回って、店も開店していた。
車を止めて中に入る。
「こんばんは」
圭が顔を出すと、いつもと変わらず。
桜がカウンターの中で煙草をふかしていた。
「なんだよ。最近全然こないじゃないか」
「すみません。ちょっと、忙しくなって。本当は今晩、来る予定だったんですけど」
圭の言葉に彼女は意地悪な笑みを浮かべる。
「いい身分になったもんだね。弟子は弟子らしく、さっさとここで弾いてればいいんだよ。あたしの特訓はまだまだ始まったばっかなんだからね。レッスンしにきな」
「鬼!」
圭の突っ込みにも動じず、高らかに笑う彼女の後ろの扉が開いて、エプロン姿の男が出てくる。
彼は重いビールケースを持っていた。
「本当だ。こいつは鬼だな。この世に出てきた鬼に違いない」
少し無精ひげの生えている男。
「野木さん……!何してんです?ここで?」
「何って。こき使われているに決まっているだろうが」
「だって、仕事は?」
桜と野木を交互に見る圭。
彼の後ろにいる高塚には、なんのことだかさっぱり分からない。
「え?辞めた」
「は!?」
どういうこと?
「この前、こいつがドイツに行くからっておれに店を預けてくれただろう。そのときに辞めた」
「だって。野木さんは留守番だったんじゃないんですか?」
「う~ん。そうなんだけどさ。桜は音楽の世界なんかよりもこっちを取ったんだぞ?そんな大切な店、1ヶ月って言ったって、おれが半端な気持ちで預かるなんて失礼だなって思ったからさ。辞めてみた」
「辞めてみたって……」
話をしながらもビールを冷蔵庫にしまっている野木。
すっかり店員だ。
桜は面白そうに笑っている。
「バカだねって言ったんだけどさ。結構頑固だからね。乃木は。あたしがなんて言ったってダメだし。路頭に迷われても困るからさ。家でそのまま雇うことにした訳」
「そうだったんですか」
「そういうこと」
ぶうぶう文句を言いながらも仕事をこなしている野木。
彼を見ていると、ふと笑ってしまう。
彼は桜のことが本当に好きなのだと思う。
だから、こうして一生懸命店も守ってきた。
桜はどうなのだろう?
彼女の周りにはたくさん男がいることが今回、発覚した。
ミハエルだってそうだ。
彼はまた桜と音楽が作りたいって言っていたし。
そのことはどうなったのだろう?
ミハエルだって桜のことを好いているように見えたし。
「それよりも。今日は別な子連れて。いい身分ね」
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