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57.蒼の誕生日1
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3月28日。
蒼にとったら記念すべき日。
大切な日なのに。
今日は遅番だった。
「遅番かぁ~」
まあ、別にいいんだけど。
誕生日なんて来たら24歳になってしまうから。
だけど、やっぱり特別な日って感じがして、ちょっぴりがっかりもしていた。
先日、危惧していた通り。
夜にどっさり雪も降って憂鬱だ。
更に、せっかく圭と一緒になって初めての誕生日だったから楽しみにしていたのに、彼は仕事で東京に行った切り。
高塚とのコンビで仕事が始まったのだ。
今日の昼には、戻ってくるって言っていたけど、朝は一人だった。
しょんぼりだ。
職場では蒼の誕生日のことなんて話をしたこともないし。
蒼にとって特別な日でも、みんなにとったら何も変わらない日常なのだ。
ちょっと視線を上げてみるけど、同僚たちは黙々と仕事をしているようだった。
きょろきょろしていると、いつも水野谷に見付かって怒られるところだけど、彼は本庁に出張だ。
なんだから来年度のことで色々打ち合わせがあるらしい。
来年は星音堂も20周年だ。
記念イベントなどもあって忙しくなりそうだ。
今年の文化祭で飛ばしすぎたから、来年のイベントをどうするか揉めているようだ。
「何サボってんだ?」
ふと隣の星野と視線が合った。
「は!いや。別に」
「そわそわして。何かあるのか?」
「いいえ。別に。課長がいないし。何かあったのかなって……」
あははと笑って誤魔化す。
「そうだ。おれも気になっているんだ。氏家さん、なんか聞いていませんか?」
星野は仕事の手を休めて氏家を見る。
ここの中では最年長だから、水野谷からも何か聞いているのかも知れない。
吉田も尾形も高田も。
みんな一斉に氏家を見る。
彼は何か知っているんだろう。
なんだか居心地が悪そうだ。
「え?おれに聞くなって」
「なにか知っているんですね~!」
吉田は嬉しそうだ。
「教えてくださいよ。氏家さんから聞いたって言いませんから」
「そう言って、どうせ裏切るクセに」
ぶうと唇を尖らせて、尾形をみる。
「あ、バレました?」
「尾形がそういうこと言うから氏家さんが警戒するんじゃないか」
高田も爆笑だ。
「おいおい、話がズレて来て、このままでは氏家さんの逃げ勝ちだぞ!」
「そうだった」
星野が話しを引き戻したので氏家はちっと舌打ちをした。
「せっかくこのまま脱線させようと思ったのに」
「氏家さんはそういうところが上手いですよね」
感心している蒼。
「それはそうだ。年の功ってやつさ。そうでもなきゃ、こんなお役所勤めはできないからな」
「そういうものなのだろうか……」
「ほら!蒼もまた丸め込まれているぞ!」
「は!そうだった。また脱線するところだった」
脱線しそうになっても、結局は星野が引き戻してくれるので、氏家は観念したようだ。
「分かったよ。ここだけの話だから。本当に。まだ本決まりではないんだ。今日、そのことを話し合ってくるって言っていたけど」
「じれったいですね!前置きはいいですから」
吉田は結構せっかちだ。
氏家は苦笑してわかった、わかったと手を振った。
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