アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
57.蒼の誕生日3
-
「新入社員って言うからさ、どんなもさっとした奴が来るのかと思いきや、こんなちまっとした奴だったからウケたよな」
星野は爆笑だ。
「え?え?」
いつの間にか話が進んでいる。
蒼はきょろきょろして話の成り行きを掴もうとするが、どんどん話は進む。
「そうそう。前にここに座っていた安斎さんは本当にでっかい人だったから。急に正反対のお前が入ってきたときには拍子抜けしたさ」
星野の言葉に同意する尾形。
「尾形なんてソワソワしちゃってさ。お前が課長に連れられてくる頃になったら外まで出て行って見張っていたりして」
くっくっと笑いをこらえる高田を尾形がたしなめる。
「そ、そんなことバラさないでくださいよ!」
「野次馬だからな」
「そんな一分一秒を争っても仕方がないことでもじっとしてられないんだよな」
「む~!」
「前の日は吉田が机を綺麗に掃除してパソコンの点検をしてくれていたんだぞ?あの頃の吉田は素直で可愛かったよな。おとなしかったし」
そうそうと思い出して懐かしそうにしている氏家の言葉にビックリだ。
今の吉田からは想像が出来ない姿。
あの安齋がいたのでは吉田の萎縮ぶりは理解できる。
「そういう素直な吉田さんをおれは見てみたいんですけど」
軽く笑って彼を見る。
少し照れたように吉田は苦笑した。
「そうなんだからな!おれが蒼のためにやってやっていたんだから。感謝しろよ」
「ありがとうございます……吉田さん」
「なっ!素直に感謝されても困るんだけどっ!」
彼はむ~っと膨れている。
みんなにこにこして話をしていた。
なんだかほっとした。
吉田も元気になって、圭も戻ってきて。
やっといつもの星音堂に戻った気がしたから。
自分が来たとき、こんなエピソードがあったなんて。
知らなかったな。
「でも蒼でよかったと思っているよ」
ふと氏家は呟く。
「へ?」
「そうだな。がめつい兄ちゃんとか、いまどきの兄ちゃんでなくてよかったよ」
「本当だ」
「そうそう。ちまっとしてマスコット的なお前でよかったんじゃん?」
みんなにそう言ってもらえると嬉しい。
「ちまっと」と言う言葉はスルーして、素直に喜ぶ。
蒼はちょっぴり照れくさかった。
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、今日の昼食はおごりな」
「やった~!」
「やっぱ下っ端は一年に一回くらいはおごらないとな」
「ええ!え!?」
誉め殺しか。
結局は持ち上げといてこれだ。
今日は蒼の誕生日なのに。
逆におごってもらいたかったのにぃ……。
蒼はしゅんとしてお財布を覗いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
420 / 869