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57.蒼の誕生日5
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「なんだよ?」
彼はビックリしたみたいに瞳を瞬かせていた。
「大丈夫ですか?」
「なに?」
「安齋さんと……どうなったのかなって」
彼は一瞬、戸惑ったような顔をしていたけど、にっこり笑う。
「蒼には心配かけたな」
「え?」
「大丈夫。なんとかやっているよ」
「本当ですか?」
「お前に嘘ついてどうする」
吉田は笑顔を見せていた。
大丈夫?
大丈夫だろう。
「ちゃんと話しているから。大丈夫。問題ない」
「そっか」
あんまり深入りしても仕方ないだろう。
蒼はその辺りで話題を切り上げる。
にこにこしていた吉田は車の鍵を見つめてから視線を蒼に戻す。
「送ってく?」
「いや。いいです。……こういう日は車の運転だって危ないじゃないですか。遠回りさせられませんから。歩けます」
「そっか」
じゃあな、と手を振って吉田が駐車場に消える。
それを見送ってから蒼もそそくさと歩き出す。
「早く帰ろう」
結局、いつもと同じ誕生日になりそうだ。
仕事は夜遅くまでだし。
圭くらいは「おめでとう」って言ってくれるかもしれないけど。
去年も一人だった。
そういえば、去年も遅番だったかも知れない。
誰にも何も言ってもらえなくて、ひねくれて誰もいないアパートに帰って。
それで、やけ酒でも飲んで寝た気がする。
今年は、圭がいてくれるだけいいのかも知れない。
そう。
よく考えないと。
圭がいてくれるんだからいいことだ。
「忘れられてないといいんだけどなあ……」
来月にある圭の誕生日のことは、もう考えてあるのに。
自分の分を忘れられていたらがっかりだな~……。
そう思いつつ、携帯を取り出す。
すると、圭からメールが届いていた。
『お疲れ。今日は昼過ぎに帰ってきて、それから桜さんとこで飲んでた。なんだか眠くなってきたから迎えに来て』
「は!?」
思わず声を上げてしまう。
なんと言うことだろう。
人の誕生日に。
あろうことか昼間っから飲んで。
本当に困った男だ。
そんなに強くないのだから勘弁してもらいたい。
ヴァイオリンの練習をしていたならともかく。
本当に失礼しちゃう。
迎えに来てって言われても困るし。
なんだかイラっとした。
放置しようかとも思ったけど、桜にも迷惑だし。
それに逢って一発、がつんと言ってやりたい。
蒼は桜の店に向かって歩き出した。
つるつるの道路で転倒しないように慎重に足を運んで歩く。
店の前に立つと、看板の電気は暗くなっていた。
「もう店閉めちゃったのかな?」
早いことだ。
まあ、この雪ではそうするしかないのかも知れないけど。
これならなおさら、早く圭を連れて帰らないと。
蒼は深呼吸をしてから、入り口の扉を押した。
「こんばんは~」
すると、中にはいつも通りに桜の姿。
「すみません。桜さん。圭が……」
そう言った瞬間。
いきなり、ものすごい音がして目の前を色とりどりのテープが舞った。
「はっ!??」
あまりのショックに思わず尻餅をつく。
すると、店内に爆笑が洩れた。
「ななな????」
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