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57.蒼の誕生日6
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瞬きをして視線を上げると、そこには。
いた。
人が。
たくさんだ。
圭。
彼はにこにこして笑っていた。
酔っ払っていたんじゃない?
「あれ?」
辺りを見渡すと、他にもいる。
星野に、吉田?
それに、高田や氏家、尾形もいた。
「な!?え??」
「ざまあみろ。ビックリして腰抜かしてるぞ」
星野は嬉しそうに笑っている。
「ええ!?」
「小心者だな~。蒼は」
「だ、だって。氏家さん。孫が来るって」
「嘘も方便だ」
「は!?どういうことなんですか??」
腰が抜けてしまっている蒼。
圭が手を差し伸べて起こしてくれた。
「今日、蒼の誕生日だって星野さんに言ったら、内緒でお祝いしようってことになってさ」
「だって、」
一日、そんな素振りはなかったはずだ。
「蒼はいつも寂しい子だろう?誕生日くらい言えばお祝いしてやってたのにさ」
吉田は首を竦める。
「今日は何事もなかったようにするの大変だったんだからな」
高田も爆笑だ。
「でも、蒼をだますのって楽勝ですよね。普通の人だったら、今日のあの変な雰囲気で嗅ぎ取るものだけど」
高田の隣では尾形が面白そうに笑っていた。
変な雰囲気??
蒼はちっとも気付かなかった。
いくら鈍い蒼だって、なにかあれば気付くはずだけど。
全く感じなかった。
家政夫失格だ。
「蒼はだましがいがあるよね」
桜と野木まで便乗して笑っている。
「ひ、ひどいです。みんなでだましたんですか??」
一人だけだまされてなんだか面白くない。
文句を言おうとしたとき。
ふと店の扉が開いた。
「あ、来たね」
「え?」
圭が視線をやった先。
そこには水野谷が立っていた。
「なんだ。看板が暗くなっていたからやってないのかと思ったぞ」
「課長まで?」
蒼はビックリだ。
今日は一日出張で忙しかったろうに。
彼は仕事から直行してくれたんだろう。
一升瓶を差し出した。
「今日はお前の誕生日だったんだってな。ほら。お前の好きな酒を買ってきてやったぞ」
「あ、ありがとうございます」
「よかったな。蒼」
「本当だ」
星野たちにそう言われると、ちょっとへそを曲げていた気持ちも治る。
「久しぶりだね。水野谷」
「桜。本当にキミの店だったのか」
「そういうこと」
二人は挨拶をしていた。
本当に知り合いだったのか。
そういえば、星音堂のみんなもここに来るのは初めてだ。
吉田なんかも「なかなかいい店だ」なんて感心していた。
「よし!じゃあ、料理も運ぼう!」
野木が笑いながら運んで来た料理は豪華オードブルだ。
「これ、野木さんが?桜さんは料理しないもんね」
そうそう。
この店にフードメニューはほとんどないはずだ。
なのに、こんな美味しそうなのが出てきたとは。
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