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59.春の受難9
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アパートに帰ってからも気持ちは治まらない。
ベッドに横になるとけだもが擦り寄ってきた。
「けだも~!おれは大変だったんだから……」
「にゅ~!」
持ち上げてぶらぶらさせると、彼は気持ちよさそうに瞳を閉じてごろごろ喉を鳴らしていた。
「お前はいいなあ。悩みもないんだろうなあ」
時計を見ると19時を回ったところ。
こんなに早く帰ってくることもないから、なにをしていいのか分からない。
しかも、今日は圭が留守だ。
彼は東京のほうでリサイタルをするって言っていたっけ。
本番は明日の日中だから、ここに帰ってくるのは明日の夜になるだろう。
こういうときに限っていないんだから。
当てにならない男だと思った。
「は~……」
独り言のようにため息を吐いて瞳を閉じる。
今日の嫌なことが頭の中をぐるぐるしていた。
「ううっ!」
ぶんぶんと頭を振ってから身体を起こす。
こういうときはアレに限る。
蒼はそそくさと台所に行ってお酒を抱えてきた。
これでも飲んで嫌なことは忘れよう。
そして明日は新しい気持ちで仕事に行かなくちゃいけないんだから……。
そう。
新しい気持ちで。
晴れやかな……。
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