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61.関口家騒動4
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チャイコフスキー?
ベートーベン?
メジャーなものがいいのか?
考えを巡らせていると、圭一郎が手を鳴らす。
「ヴィヴァルディ!」
「は?」
「え?」
「??」
部屋にいた一同はぽかんとする。
「みんな知らないのか?偉大なるバロック巨匠ヴィヴァルディだ」
「そんなの知っている」
圭は慌てて口を挟む。
「なんだ。知っているならどうしてそんな反応をする?」
「だ、だって。オケ?室内楽をする気か!?指揮者なんていらないだろう?」
う~ん……と圭一郎は恥ずかしそうに笑う。
「実は、恥ずかしながら未経験があってね」
「な、なんだ?なんだよ。その言い方……」
「う~ん」
ソファから立ち上がり、彼は黙り込む。
「はっきり言えよ。ちゃんと聞いてやるから」
これではどちらが父親なのか分からない。
渋谷もおかしそうに笑っていた。
「でも~……」
「言ってみないと分からないだろう?」
少しもじもじしていた圭一郎は嬉しそうに息子を見つめる。
「四季。ヴィヴァルディの四季をやりたいのだ」
彼はうっとりした瞳で天井を仰ぐ。
「こんなに、経験豊富な私だが、弾き振りしたことがないのだ!!だから、初体験!」
「乙女かよッ!」
思わず突っ込みを入れてしまう。
「こんな申し出を引き受けてくれるのは圭しかいないだろうな~って思って。それで今回お願いしたって訳だ」
呆れてしまう。
これでは完全に息子に甘えているようなものだ。
「本当に親かよ」
「圭はゼスプリで四季の夏をやっているだろう?いいじゃないか。全曲やったら勉強になるぞ?」
「……」
それはそうだ。
何事も無駄と言うことはない。
むしろ、彼と一緒に出来るのだからものすごい収穫になることは間違いなしだろう。
曲はなんでもいい。
少し変った趣向もいいのかも知れない。
圭は首を竦める。
「あんたに任せる。おれは指導してもらう身だからな」
圭一郎は「またまた~」と恥ずかしそうにしている。
「指導するだなんて。まったく心にもないことを……」
そう言いつつも嬉しいのだろう。
照れ笑いをしている。
バカな親子だと周囲の人間は思っていた。
素直じゃない息子。
息子に気に入られたい親。
世界の音楽親子なのだろうか?
高塚は苦笑してしまう。
その隣にいた有田も笑っていた。
「それでは曲目が決まったところで、日程や練習について詰めて行きましょう」
渋谷の声に一同は椅子に腰を下ろし、資料を手に取った。
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