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61.関口家騒動6
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有田には帰ってもらい、憤慨している圭一郎の後に続いて自宅に帰ると、かおりが待っていた。
「お帰りなさい」
圭はその様を見て納得する。
圭一郎が仕切りに自分を自宅に寄らせたかったのはこういうことか。
せっかくの家族の団欒。
圭一郎の様子がおかしいのでかおりは首をかしげた。
「どうしたの?圭ちゃん」
「かおり。大変なことだ」
「え?」
ソファに座り込むと圭一郎は黙った。
「なに?どうしたの?せっかく親子で揃ったのに」
瞬きをしているかおり。
圭は気まずそうにしていた。
「朱里は?」
「まだ寝ているけど?」
「呼んできなさい」
「圭ちゃん…」
珍しい態度にかおりは頷いて部屋から出て行った。
「あのさ。あんまり朱里のことを責めないほうがいいと思うんだよね」
なんとかフォローしないと。
そう思って言葉を発するが、圭一郎は厳しい表情のままだった。
「確かに。恋愛は自由で素敵なものだ。芸術家にとったら恋愛は力になる。だが、人様に迷惑をかけてしまうことだけは許されないと思っている」
「父さん」
「恋愛には様々な形があって然り。お前たちもそうだ。だけど、不倫はいけないね」
それっきり黙り込む圭一郎。
この人にもそういう感覚ってあるのだということに驚かされた。
いつもはふざけているのか、飛んでいる言動ばかりの父親だけど。
諦めて静かにしていると、かおりが朱里を連れて入ってきた。
「なあに?」
彼女は眠そう。
それはそうだろう。
巷では日曜日だ。
彼女もお休みの日。
「朱里、ここに座りなさい」
彼女は顔をしかめて圭一郎の前に座る。
「珍しいじゃない。みんな揃うなんて」
ちらっと圭を見てから彼女は大人しくする。
「不倫をしているんだって?」
圭一郎の言葉にかおりはビックリした顔をする。
彼女には初耳なことだから。
朱里は少し面白くなさそうな顔をして圭を見る。
「お兄ちゃん、言ったの?」
「悪い。つい」
ここは素直に謝っておくべきだろう。
しかし圭一郎は首を横に振る。
「圭が謝ることではないよ。家族で隠し事はいけないことだ。ちゃんと説明しなさい」
朱里はむっとしている。
「なんであたしばっか怒られなくちゃいけないわけ?お兄ちゃんのほうがよっぽど変でしょう?」
それを言われてしまうと痛い。
「朱里」
「不倫のなにがいけないのよ」
彼女は興奮してしまっている様子だ。
「不倫はよくないの。分かる?不幸な結果しか生まないものなのよ?」
かおりも口を挟むが、彼女は納得できないらしい。
「相手は誰なの?」
「お父さんたちは知らない人だよ。なにも言う必要がないわ」
「朱里」
む~っとして彼女は席を立った。
「うざいんだよ、本当に。放って置いて!あたしに関わらないでよ!」
彼女はそう言い残し、さっさとリビングを出て行ってしまった。
「朱里!?」
かおりが追いかけるが、彼女は自室に戻るどころかさっさと玄関に向かった。
「どこに行くの?」
「知らない!しばらく一人になりたいの!」
乱暴に玄関が閉まり、かおりはため息を吐く。
せっかくの家族の団欒は最悪の結末を迎えた。
「……どうする?圭ちゃん」
かおりが戻ってくると、圭一郎は手を鳴らす。
「朱里も思うところがあるから怒るのだろう。彼女なりの答えを出すはずだ。少し様子を見るしかないだろう」
「圭ちゃん」
彼は笑顔を見せるが、それが本心ではないことがよく分かる。
すごく心配しているに違いない。
このまま彼女が家出をして帰ってこなかったら?
そういう不安は払拭できない。
「さ。かおりの料理でも食べて元気を出せ。圭」
「なんでおれ?」
「蒼とのことを指摘されてショックだったのだろう?」
ショックなんか受けていない。
それよりも朱里のことが心配だったから。
「人に話題を振るなよ」
自分のことをネタにされたのでむっとするが、これが彼の身を守るための行動だってことに気が付いて苦笑する。
好きなだけ言わせておけばいいだろう。
「はいはい。分かったって。じゃあご飯でも食べるか」
圭の声にかおりは席を立った。
「ご飯を食べたら探しに行きましょうね」
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