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61.関口家騒動7
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「雨が降りそうだな」
尾形の声に蒼は視線を外に向けた。
「本当だ……」
でも今日は傘を持ってきたから助かった。
日曜日なのに当番はきつい。
今日はイベントが少ないからいいものの、自分の仕事にも限界がある。
遅番まで残っていると、もうやることも見当たらないくらいだった。
ぼんやりと頬杖を付いてため息を吐く。
尾形は休み明けの会議資料作成に追われているようで、一生懸命にパソコンと睨めっこをしている。
それを横目で見てぼんやり外を見る。
圭は大丈夫だろうか?
今日は圭一郎との演奏会の打ち合わせに行っているから。
朝から不安そうにしている彼の様子が心配だった。
大丈夫だろうか?
圭が父親に対してどれほどのコンプレックスを持っているのか、よく分かっているつもりだ。
上手く打ち合わせをしてくれていればいいのだけど……。
「は~……」
ため息が出る。
「おっと。こんな時間だ」
尾形は出来上がった書類を印刷して声を上げた。
「え?」
「今日は利用者もいないし。少し早いけど終わりにするか」
「いいんですか?尾形さん」
「いいだろう?課長には内緒だ」
彼はパソコンを閉じ、帰り支度をする。
時間は20時30分を回ったところだった。
「課長に内緒って。出勤簿でバレますよ」
「いいじゃん。日曜日は早めに帰ってもいいってお達しがあるんだからさ」
確かに。
日曜日は特別シフトだ。
夜間、利用者がいない場合は仕事状況に応じて早めに帰宅してもいいことになっている。
「おれ、よく分からないんですけど、日曜日の取り決めってどうなっているんですか?」
結局、蒼も釣られて帰宅の準備に取り掛かった。
「え?なにも変らないさ。平日の遅番みたいなものだ。17時15分以降の勤務は残業扱い。だから、本当だったら仕事がなければ帰っていいことになっているんだ」
「そっか」
「だけど、一応、営業時間は21時までになっているだろう?だから電話当番とかが必要なわけ」
「そうですよね」
「でも日曜のこんな時間に星音堂に電話してくる奴なんているわけないんだって。平日だと夜間の利用者も多いから仕方なく21時までいなくちゃいけないけど。今日みたいに利用者がいない場合は帰ってもいいってことになってんの」
ここに勤めて長いが、利用者がいないなんてそうそうないことだ。
蒼にとったら初めてに近い話。
そうだったのか。
これからは参考にさせてもらおう。
「さて。戸締りは終わっているし。電話を留守電にしてくれ。帰るぞ」
「はい」
蒼は電話を切り替えてほっとする。
消灯した事務室は静かだった。
今日も一日が終わる。
安堵した。
「また来週な」
尾形と別れて、蒼は帰途についた。
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