アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
62.棲み家2
-
佐野の運転で二人は目的地を目指す。
蒼は相変わらず表情が硬い。
それとは対照的に圭はにこにこして外を見ていた。
「いやあ、仲がいいご兄弟ですね」
へ?
佐野の言葉に瞬きをする。
一瞬、車内に沈黙が流れた。
「あれ?ご兄弟ではないんですか?」
佐野はしまったと言う顔をしていた。
それはそうだ。
こんな男が二人で一つの家を買おうとしているのだ。
兄弟かなにかにしか見えないだろう。
世間一般の常識で言ったら恋人と言うカテゴリーはありえないのだから。
「あ。あの」
蒼がまごまごしていると圭が声を上げる。
「おれら友達なんです。ま、どっちかの名義で購入にはなるんですけど、ルームシェアですよ」
こういう場合は機転が利く。
「ルームシェアですか。売家でって珍しいですね」
「ええ。マンションでもいいかなって思ったんですけどね。どっちかが出てもまた別な友達ってことも可能だし。もし、どっちも出ることになっても綺麗にリフォームしておけば借家にもなるかなって思って」
ふんふんと佐野は頷く。
「もし借家にするとしたら佐野さんのところで扱ってくれますか?」
「え!もちろんです!そういう場合は是非、お声をかけてください」
彼はにこにこしている。
もう買った後のことまで話題が及んでいるので手ごたえありと判断したのだろう。
後部座席に身体を預け、圭は苦笑する。
よくもまあ、ここまで嘘がすらすらと口を吐いて出てくるものだ。
蒼は呆れてしまう。
それだけ上機嫌と言うことなのだろうけど。
「到着です。えっと、駐車場は少し狭いんですけど、詰めれば2台は停められると思います」
佐野は慣れた感じで車を車庫に納める。
ちゃんと屋根までついているのだからすごい。
車から降りて、ちらっと見える庭。
おばあちゃんが一人暮らしだったから結構渋い庭になっている。
しばらく放置されているから仕方がないのだろうけど、草が結構生えていた。
庭の奥のほうには大きな木がある。
「あれは桃かな?梅かな?ともかく、春になんか咲くみたいですよ。もう葉っぱになっちゃっていますけどね」
佐野はそういう話には疎いらしい。
蒼だってさっぱり分からない。
もちろん、圭も同様だ。
鍵を開けて玄関を開くと、埃っぽいかおりが鼻をついた。
少しくしゃみが出る。
「すみません。アレルギーですか?」
「あはは。すみません」
蒼は鼻を手で押さえて笑う。
掃除が大変だ。
「埃が出るってことは日当たりのいい証拠ですよね。じめじめしてないんでしょうから」
圭は頷く。
そういう変な知識はどこで仕入れてくるのだろうか?
彼を見上げると、蒼の意図を汲み取ったのか。
圭は笑う。
「星野さんから」
やっぱり。
そういう下らない薀蓄は星野の特権みたいなもんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
470 / 869