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67.家出2
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いつもの場所。
ホワイエの2階。
以前は喫煙所だったそこは今では禁煙区域。
星野はもどかしそうに椅子に座る。
「で。なに?」
「そんなぶっきらぼうに聞かなくてもいいじゃないですか。なんだか言う気しないし」
「なんだよ。せっかく大切な仕事時間を割いて聞いてやろうって言ってんだからさ」
「大切なって」
仕事なんか、あわよくばしたくないクセに。
蒼はぶ~っと口を尖らせてから星野の隣に座る。
「昨日の夜なんですけど……」
昨晩のこと。
圭が女性を家に連れてきた。
桃以外の女性。
「はじめまして。東野です」
彼女はそう言って笑った。
「今度、おれの伴奏をお願いするんだけど、ちょっと練習が間に合わなくてさ。悪いんだけど、おれたち練習室で調整するから。蒼は寝てていいからね」
圭はそれだけ言って彼女と一緒に練習室に消えた。
一つ屋根の下でそれはない。
変なところ神経質な蒼は気になって仕方ないのだ。
おろおろして、ベッドに入っても眠れそうにない。
何時までやる気なんだろう?
彼女。
終わったらどうするのかな?
送ってくのかな?
どこの人なんだろう?
初めての人かな?
それとも自分の知らないところでは何度も会っている仲かな?
疑問がぐるぐるして目は冴えるばかり。
なにもないところで考え込んでも、焦るばかりで時間が過ぎるのがゆるやかに感じられた。
寝ることを諦めてテレビをつけてみても深夜だし。
テレビショッピングばっかり。
ごろごろしてソファに横になる。
人の様子を伺うなんて嫌になった。
最初、ベッドで眠っていたけだもが、蒼がいないことに気が付いてやってきた。
あくびをしつつ、蒼のいるソファに飛び乗って、そのまま丸まる。
側にいてくれるのだろう。
こういう時、けだもがいてくれて助かる。
頭を撫でるとゴロゴロ喉を鳴らして気持ちよさそうに瞳を閉じていた。
猫はいい。
なにも悩みもないし。
気になって眠れないなんて。
完全なるヤキモチだ。
恥ずかしい。
こんなつまらないことにヤキモチを焼くなんて。
暗い室内でテレビだけが青白く光る。
どんなにつまらない番組でも眠気は全く起こる気配がなかった。
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