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67.家出3
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「んで?」
「んでって……」
「いつ出てきたわけ?二人」
「それが」
蒼は俯く。
「出てこないんです」
「へ?」
「朝になっても出てこなくって。練習室に入っている間はどうしてもの用事以外は連絡をしない約束になっているから。なにも。声もかけないで仕事に来ましたけど」
星野は呆れた顔をする。
「まあ、関口に限って、まさか恋人がいる目前で浮気をするとは考え難いけどな」
蒼はがっくりうなだれる。
「改めて言葉にしないでくださいよ。気にしているんですから」
「仕方ないだろう」
圭のことをよく知っている星野はそんなことをするはずがないと思いつつ、一方では少し心配なことがあるのは確か。
あのコンクール以来、星音堂にまったく顔も出さないし。
何考えているんだか。
いくら付き合いが長いと行っても、彼を取り巻く環境は変化しているのだ。
もう星野の手中からは飛び出しているのかも知れない。
「もうおれでは相談相手としては不適切なのかも知れないな」
ぼそっと呟く星野。
「え?」
「いや。なんでもない。本当だったらおれが逢ってがつんと言ってやってもいいけど。あいつがここに来ることもないしな」
「……そうですよね。もうちっともここに来ないし」
すまなそうにしている蒼。
「お前のせいじゃないだろう?」
「でも」
「なんでもかんでも自分のせいにするな。世の中、お前だけが悪いなんてことはないんだから」
「それはそうですけど」
いつもだったら星野と話をすれば、なんとなく先が見えるものだが。
星野自身も、もやもやしているのだろう。
相談したほうもされたほうも。
霧のような不安を感じて、二人はぼんやりと時間を過ごした。
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