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67.家出6
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ぶらぶらしていた。
行くあてなんかない。
知り合いのところになんか行ったら圭に見付かってしまうだろうし。
いろいろなことを考えながら、真っ暗な道を歩く。
ぼんやりと視線を上げると、見たこともない公園を見つけた。
ともかく。
そこに入ってみる。
切れかかっている外套の下にあるベンチに腰を下ろしてぼんやりする。
行くあてがない。
見付かるから。
なんてこれもまた奢りだ。
圭が探す保証だってないのだから。
もしかしたら本当に彼女といい感じになったのかも知れない。
だからあんなことを言ったのかも。
もしかしたら、昨晩、一緒にいたときに自分のことを話したのかも知れない。
自分のせいで思うように音楽活動が出来ないって。
だから東野は。
きっとそうに違いない。
だって彼女と自分は初対面に近いのだから。
急にそんなことを面等向かって言うなんて失礼すぎる。
普通だったら言わないはずなのに。
「なんであんなこと。分かっているもん。言わなくたっていいじゃない……」
しょぼんとなってしまう。
心のどこかでくすぶっていた不安が一気に増大する。
ずっと不安だった。
自分と圭は住む世界が違くて。
お互いがお互いを求めるほど、我慢しなければならないことが出てくるって。
今までは、なんとか言い聞かせてきた。
ショルにも、油井にも、桜にも。
みんなに慰められてきた。
だけど、初めて他人の口から指摘されてびっくりした。
現実から目を背けて、なんとか保ってきた気持ち。
それが保たれなくなってしまったのだ。
混乱していた。
大きくため息を吐くと、涙もこぼれた。
昨日から辛かったせいだろう。
寝てないし。
精神的な疲労のせいで、一度に身体も疲れが出る。
ベンチにもたれかかり夜空を仰ぐ。
「最悪だ……」
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